日本重症心身障害学会誌
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O-1-D15 乳酸菌抗菌ペプチドを含有する歯磨剤の口腔清掃での使用経験
森下 純子中村 全宏泉川 仁美吉野 綾藤田 晴子弘中 祥司
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2016 年 41 巻 2 号 p. 238

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抄録
はじめに 心身障害児(者)はう蝕罹患率が高く、しかも重篤なう蝕を有するものが多いと言われることがある。しかし実際には、健常者と比較してう蝕に罹患しやすい特性を持っているわけではなく、大差はない。それは日常の口腔清掃に問題となることが多いからと思われる。口腔清掃指導上問題となる点は、歯磨き習慣の有無、うがいの可否や食習慣などがあげられる。これらの問題を解決できないと歯科疾患に罹患する確率が高くなる。 そこで今回、乳酸菌抗菌ペプチドを含有した歯磨剤(オーラル・ピース®、以下、OP)を重症心身障害児(者)の口腔清掃に使用したので、その概要を報告する。 対象と方法 今回の歯磨剤OPの使用による口腔清掃指導の対象は、嚥下機能には問題がなく、うがいのできない重症心身障害児(者)とした。口腔内状況、食事状況、家族環境などをまとめ、この歯磨剤の受け入れ状況やプラーク付着状況で効果を評価した。 結果と考察 この歯磨剤OPを使用した後の結果では明らかな改善傾向はみられなかったが、使用後う歯が増加することはなかった。 医薬部外品歯磨剤の基本成分には、清掃剤、発泡剤、潤滑剤や香味剤以外に消毒効果の高い薬用成分やフッ化物が含まれている。そのため、うがいや吐き出しができない心身障害児(者)には使用できない。飲み込み可能な歯磨剤もあるが、成分から判断してなかなか導入を勧められなかった。しかし、OPは食品から生成した成分を使用していて十分な殺菌効果もあり、嚥下しても安全な歯磨剤として、口腔清掃に有用な製品と考えられた。 結語 飲み込んでも安全な歯磨剤を使用して効果が確認できた。今回の使用では明らかな導入前後の違いは認められなかったが、さらに対象者を拡大して、安全性と効果について検討する予定である。今後これらの効果についての評価として唾液流出量の測定法や詳細な細菌学的検索など加え有用性を検討したい。
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© 2016 日本重症心身障害学会
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