抄録
はじめに
食道経由経腸栄養用チューブ(以下、EDチューブ)が計画外抜去されると誤嚥のリスクや透視下で再挿入しなければならず身体的負担が大きい。今回、EDチューブを安全に管理することを目的に5年間のインシデント報告から計画外抜去に至る要因を振り返ったので報告する。
対象
調査期間中にEDチューブを留置している患者25人のうち、当センター入院中にEDチューブを計画外抜去した1〜18歳までの重症心身障害児(以下、重症児)
研究方法
2010年4月〜2015年3月のEDチューブに関するインシデント報告46件のうち35件の計画外抜去のインシデント報告から要因を抽出する。
結果
計画外抜去につながる「分泌物、発汗が多い」「NPPV・ハイフローセラピー」「手指が動く」「体動が激しい」の4つの要因を抽出した。
考察
重症児の中には、筋緊張が強く嚥下が上手くできないことで口腔内に唾液や「分泌物が多い」状態となり口腔や鼻腔から溢れていることが多くEDチューブを固定するテープが剥がれやい状況にある。また、中枢性の低換気や上気道の閉塞により「NPPV・ハイフローセラピー」による治療が必要となり、NPPVのマスク内は加温加湿されており固定のテープが剥がれやすい状況にある。そして、気道閉塞などの不快な状況や心理的ストレスの増強により筋緊張を増強させ「分泌物、発汗が多い」状況を招きEDチューブを固定するテープが剥がれやすい状況を招いたと考えられる。入院に伴う環境の変化や、重症児にとって日常のケアに慣れていないスタッフに起因する心理的ストレスが児の筋緊張を強め「体動が激しい」「手指が動く」状態を引き起こし、EDチューブを引っ掛けて抜去にいたることも考えられる。
まとめ
筋緊張の強いアテトーゼ型脳性麻痺児や、環境や人の変化などに敏感で心理的ストレスを受けやすい重症児は、計画外抜去にいたる要因が複数該当しており計画外抜去を繰り返していた。