日本重症心身障害学会誌
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P-1-F21 重症心身障害児者における慢性副鼻腔炎への対応
木内 正子山下 久美子小田 望永江 彰子藤田 泰之種子島 彰男口分田 政夫
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2016 年 41 巻 2 号 p. 267

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抄録

はじめに 重症心身障害児者の不明熱、原因不明のCRP上昇や頭蓋内圧亢進症状に、慢性副鼻腔炎が関与していることがある。炎症が遷延する要因として鼻中隔湾曲症等の副鼻腔の構造異常や副鼻腔粘膜線毛上皮の機能障害が考えられている。一般的にマクロライド療法等の保存的治療や内視鏡下副鼻腔手術等の手術的治療が行われるが、重症心身障害児者においては難治・重症化により対応に難渋する症例が多い。今回、当センターで難治・重症化例を複数経験したので、今後の対応の課題も含めて報告する。 症例 症例1 55歳男性 新生児仮死 大島分類1 慢性副鼻腔炎 耳鼻科診察にて手術適応なし マクロライド療法にて改善なし 辛夷清肺湯・補中益気湯の内服にて治療、画像上明らかな改善認めず 症例2 53歳男性 先天性水頭症 大島分類1 慢性副鼻腔炎 耳鼻科診察にて手術適応なし マクロライド療法にて改善なし 辛夷清肺湯・補中益気湯の内服にて治療、画像上明らかな改善認めず 症例3 30歳女性 溺水による低酸素性虚血性脳症 大島分類1 慢性前頭洞副鼻腔炎の急性増悪 上眼瞼に炎症波及内視鏡下副鼻腔根本術施行後、再発し鼻洗浄・肉芽除去にて治療継続 栄養剤の変更が重症化防止に有効 症例4 55歳女性 大島分類1 慢性副鼻腔炎より波及したと考えられる真菌性硬膜下膿瘍 前頭部穿頭ドレナージ術施行後、抗真菌薬投与にて治療 改善なく死亡 まとめ 2例は保存的治療を行うも改善せず。副鼻腔外に炎症が波及した2例のうち1例は手術的治療を行い一旦改善するも再発、栄養剤の変更が重症化防止に有用。1例は手術的治療を行うも改善せず死亡。 考察 重症心身障害児者における慢性副鼻腔炎については治療に反応しない例や再発する例を多く経験する。炎症が頭蓋内へ波及した場合予後不良の転機をとることが多く、重症化を防ぐため有効な方策の構築が重要と考えられた。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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