日本重症心身障害学会誌
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P-1-F22 重症心身障害児者施設におけるRSウイルス感染症についての検討
小峯 聡
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2016 年 41 巻 2 号 p. 267

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抄録

背景と目的 RSVは、早産児・慢性肺疾患を有する児等で下気道感染症が重症化することはよく知られている。重症心身障害児(者)でもRSVに罹患すると閉塞性・拘束性換気障害を有することが多く呼吸感染症が重症化しやすいと考えられる。今回、2病棟でRSVの集団感染が認められ重症化したため、呼吸器症状を有した患者のRSV-CF抗体・臨床経過等を後方視的に検討した。 対象と方法 当センターでRSV集団感染が起きた2病棟(A病棟・B病棟)の患者について後方視的に検討する。RSVに罹患した患者数は、A病棟(女性病棟25名中)9名、B病棟(男性病棟25名中)12名。呼吸器症状があった患者のRSV-CF抗体価(ペア血清)と臨床経過(呼吸感染症等の変遷等)について検討し報告する。 結果 A病棟(女性病棟)呼吸器症状があった患者数は9名であった。その内訳は急性気管支炎・気管支喘息発作7名、急性上気道炎・急性気管支炎2名であった。点滴静注をした患者は4名であった。RSV-CF抗体価の上昇した症例は、呼吸器症状が激しかった症例と一致した例があった。一方、B病棟(男性病棟)呼吸器症状があった患者数は11名であった。その内訳は気管支喘息発作3名、急性気管支炎3名、急性上気道炎5名であった。点滴静注をした患者は3名であった。呼吸器症状が激しかったがRSV-CF抗体価上昇が見られなかったのは2名であった。 考察 RSV抗原陽性で臨床的には重症化したがRSV-CF抗体価が上昇しない患者が見られた(B病棟;2名)。RSV抗原陰性で症状は中等〜重症化しRSV-CF抗体価が上昇した患者が見られた(A病棟;2名)。A・B病棟ともRSV抗原未検査例でもRSV-CF抗体価の上昇が見られた患者がいた。RSV-CF抗体価(ペア血清)と臨床症状等を後方視的に検討した結果、RSV抗原陰性であってもRSV感染症が疑われなくても病棟内で呼吸器症状のある患者は、病棟内でゾーン管理をすすめて全体に蔓延しないように管理していく必要がある。

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