日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-2-E19 24時間姿勢管理により胸郭変形が改善した児の一例
−第2報−
吉井 牧子菅沼 雄一片山 由美子富樫 怜奈豊島 彩子鈴木 綾子高桑 佳織長谷川 朝彦
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2016 年 41 巻 2 号 p. 300

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抄録

はじめに 重症心身障害児の胸郭変形はしばしば進行性を示す。Goldsmithらが考案した胸郭扁平率(厚さ/幅)は、山本らによれば正常成人の平均は0.69で厚さより幅が広い。本学会にて昨年、胸郭扁平率が高くなり厚みが幅よりも広くなる傾向にある児に対し、24時間姿勢管理を工夫し改善した結果を報告した。今回その後の胸郭変形と呼吸状態の経過を追い結果を得たので報告する。 方法 対象は5歳男児。Gross Motor Function Clasification System レベル5。診断名はPEHO症候群、新生児脳症後遺症、先天性心疾患(VSD、PH)。人工呼吸器管理(SIMV、自発呼吸有)。口頭気管分離術済み(2014年8月)であるが、背臥位で心拍数上昇と動脈血酸素飽和度の低下を示すため長時間の側臥位管理。円背、胸骨前方突出悪化傾向。方法は、腕の重みを軽減するための腕パット、脊柱を伸展しやすく胸郭自体の重みを軽減するための体幹パットを合成して作成し、24時間姿勢管理に使用した。期間は2015年5月〜2016年6月。胸郭の厚さと幅の計測、肩の関節可動域テスト、呼吸状態の観察を行った。 結果 胸郭が横に広がり、深い呼吸が見られた。また肩挙上、水平内転し、脊柱を後弯させる努力呼吸が減少した。胸郭扁平率は1.39から1.01へ、肩の関節可動域(右/左)は外転40°/40°から65°/70°へと改善した。呼吸数の減少、動脈血酸素飽和度は向上傾向となった。経過より胸郭扁平率と呼吸数は相関(係数0.686)した。 考察 パット使用にて胸郭の横の広がりと脊柱の伸展が保証され、胸椎の後弯を強めて胸郭の前後径を厚くする努力呼吸が減少し、肩甲挙筋/大胸筋等の吸気補助筋の筋緊張が緩んだと考える。その結果、胸郭扁平率、肩の関節可動域が改善し、呼吸機能の改善傾向に影響したと考える。 まとめ 適切な姿勢管理を24時間行うことで、胸郭の変形を改善することが可能であった。また、胸郭変形の改善は呼吸・循環機能の改善と相互に影響している傾向が見られた。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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