抄録
はじめに A氏は人工呼吸器を装着しており側彎、体幹のねじれ、拘縮が強い。現在、経管栄養の注入後に嘔吐することが多くなり、便秘傾向で薬剤を調整し経過をみている。今回A氏の消化器症状の改善にむけ看護師がポジショニングを施行することで、二次的障害の改善につながるのではないかと考え本研究に取り組んだ。 目的 ポジショニングが二次的障害である消化器症状(嘔吐、胃残の量、便秘)の改善に効果的であるかを検証した。 方法 ポジショニング施行前後の便回数、嘔吐回数、胃残の量をカルテより単純集計比較する。 研究期間 平成28年9月〜平成29年1月。 研究対象 A氏 20代男性 レノックス症候群 倫理的配慮 患者の両親に対して、研究の参加は自由であること、プライバシーが侵害されないこと等を文章で説明し同意書にて承諾を得た。 結果 排便回数は介入前1回/日、介入後1回/2〜3日に減少した。便の性状は介入前、水様便だったが介入後は有形便に変化した。嘔吐回数は介入前0.5回/日、介入後0.7回/日に増えた。胃残の量は介入前平均52.6ml/日、介入後35.7ml/日に減少した。胃残の量が50ml以上の回数は介入前12回、介入後5回に減少した。 考察 ポジショニングの施行で 1)自力排痰が促され、咳込むことで嘔吐を誘発、注入時間に関係なく嘔吐の回数が増えた。 2)胃から腸までの通過が良くなり胃内容物の停滞が改善、胃に貯留しなくなったことで注入直前の胃残が減った。 3)消化管からの吸収が良くなり水様便から有形便に変化した。 4)自力排痰の援助につながった。 結論 二次的障害である消化器症状の改善に効果的であると立証できなかったが、影響を与えた点として以下のことが挙げられた。1)経管栄養中の逆流防止、 2)体位ドレナージ効果により排痰が促され気道内クリアランスの向上、3)体圧が分散され、褥瘡予防の効果があった。