日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
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P-2-G07 重症心身障害児(者)の避難場所の選択理由
−津波からの避難に焦点をあてて−
山本 美智代中川 薫田中 総一郎
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2017 年 42 巻 2 号 p. 298

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抄録
研究目的 発災後に自宅から離れて避難した重症心身障害児者(以下、重症児者)の家族が、何を理由に生活場所を変えていったのか、家族の思いを記述する。 研究方法 本研究は2011年に生じた東日本大震災で、緊急一時避難、それに続く二次避難の経験がある重症児者の家族を対象に、インタビュー方法を用いてデータ収集を行い、Grounded Theory Approach を用いて分析を行った質的記述的研究である。研究対象者のリクルートは、知人から候補者に研究参加者募集のチラシを渡してもらい、メール等で意思表示のあった方に文書と口頭で研究協力の依頼を行い、同意の得られた方を研究参加者とした。 分析結果 研究参加者は重症児者の母親6名であった。6名の重症児者のうち、1名は人工呼吸器を装着し、4名は気管切開を行っていた。残りの1名は自力で動くことが可能であった。いずれの参加者も東日本大震災発災当時は、宮城県内の沿岸地域に住んでいた。研究参加者は大地震発生後、津波から緊急一時避難を行い、その後二次避難、仮住まいと主に三度、場所を移して安住の地に至っていた。緊急一時避難と仮住まいの場所の選択は、共通した特徴がみられた。まず、大地震発生時に自宅にいた者は5名であり、津波の到来情報を得ていた者は誰もいなかった。窓から見える津波や仕事場や外出先からかけつけた父親の判断で緊急避難を開始するという特徴がみられた。そして、仮住まいの選択基準としては、母親自身が身動きできるように、子どもである重症児者と家族が安心して生活できる場を大事にしていたことは共通していた。 一方、緊急避難場所から次の二次避難場所の選択は、子どもの身体的な特徴や個々の家庭の生活史によってそれぞれ異なり、一般避難所に居続けることを選択する場合があった。 考察 二次避難場所は、先行き不透明な中での選択であるため、個別性が高いと考えられた。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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