抄録
本研究では,高齢者における腱板断裂と肩こり症状および姿勢不良との関係について検討した.対象は,地域在住高齢者215名とした.腱板断裂の診断には,超音波診断装置を用いた.肩こり症状は,調査時点から過去1か月の自覚症状の有無を聴取した.姿勢アライメントの分類には,Kendall分類を用いた.統計解析にはχ2検定を用い,腱板断裂,肩こり症状,不良姿勢の三者間の関係性を分析した.また姿勢不良を調整変数とし,肩こり症状と腱板断裂との関連を検討した.肩こり症状は,腱板断裂,姿勢不良との間に有意な関連は認められなかった.腱板断裂は姿勢不良との間に有意な関連が認められた.良姿勢群において,肩こり症状と腱板断裂との関係を分析した結果,両者に有意な関連が認められた.一方で,姿勢不良群では,両者間に有意な関連は認められなかった.良姿勢であるにも関わらず肩こり症状を訴える高齢者には,腱板断裂が検出される割合が高いことが示された.