抄録
目的 本研究では、重症心身障害児(以下、重症児)をもつ母親らを対象として、アンケート調査を実施した。調査項目の内容として「子どもと母親の生活状況、福祉サービス等の利用状況、生活上の困難さ、制度や福祉サービスに今後求めたいこと」等を中心に質問紙を作成した。重症児とその母親を対象とした生活実態とニーズの把握のための基礎情報を得ることを目的とした。 方法 A県B市に在住する重症児とその母親らを対象としアンケート調査を実施した。2施設に母親へのアンケート用紙の配布を依頼し、同封した返信用封筒にてアンケートの回収を行った。 結論 主たる介護者はほぼ母親が担っている結果となり(97.5%)、子どもの生活すべてを母親が支えているという実態となった。また、母親の健康状態については、「健康状態に不安がある」「健康状態が良くない」と回答した母親が半数以上(60.9%)となった。主たる介護者である母親が緊急の用事や病気等で介護ができないときには、「他の家族が介護する(87.8%)」といった回答が最も多く、「家族以外の親戚に介護を依頼する(39%)」、「通所している施設に依頼する(34.1%)」といった回答が次いで多い結果となった。 就労意欲については、「今後、働きたい」「すぐではないが、今後検討したい」と回答した母親が多かった(63.4%)。働く場合には子どもを「2〜4時間程度(34.1%)」、「4〜6時間程度(21.9%)」、「6〜8時間程度(19.5%)」を母親以外に預ける、依頼する必要があるという結果であった。家計の状況に関する項目(家計が大変苦しい、やや苦しい48.7%)や母親の自己実現といった側面との関連が示唆された。子どものサポート体制が充実した際には就労希望のある母親が多いことが示唆された。本研究はJSPS科研費(26870625)の助成を受けたものである。