日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-26-02 脱衣・放尿・他害を繰り返す、(いわゆる動く)重症心身障害者の行動要因分析
坂本 孝大
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2019 年 44 巻 2 号 p. 412

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抄録
はじめに A氏は、脱衣・放尿・他害等の問題行動があり、脱衣から不潔行為による皮膚のトラブルが目立っていた。A氏の問題行動はなぜ起こるのか、行動の機能アセスメントを行い、問題行動の要因を明らかにしたいと考え取り組んだ。 目的 A氏の行動観察を行うことで、問題行動の要因を明らかにする。 方法 1.期間:2018年3月〜6月 2.対象者:A氏、40代男性、フェニールケトン尿症、重度知的障害、強度行動障害スコア18点 医療度判定スコア41点 3. データ収集・分析方法 1)ABC分析を用い、「直前の状況」「行動」「結果」に分けて記録用紙を作成。 2)A氏の問題行動で頻度の多い、脱衣・放尿・他害について行動の観察記録を行う。 3)同じ行動をMASの診断スケールを用い分析する。 結果・考察 A氏の脱衣・放尿はABC分析では、その行動を起こすことで必ずスタッフが個室へ誘導し、その結果騒がしい環境から逃れることができる。MASの結果は同じように騒がしい環境からの逃避ではないかという結論に至った。 他害行為についても同じく、騒がしい環境で起こることが多く、他者の動きにイライラが募りその場から移動したいという要求であるといえる。MASでの結果も同じように逃避の項目が最大で、脱衣も他害もABC分析とMASの結果は概ね一致した。そこで日中の過ごし方をスタッフ間で検討し、環境への配慮、刺激の整理、個別活動の工夫などの対策を行った。 結果、対策前の脱衣の回数は、一日の平均4.5回/日であったのに対し、対策後は3.6回/日に減少がみられた。また他害行為については、対策前は4.5回/月で、対策後は0.5回/月と減少が見られた。行動障害がある利用者の支援においては、行動がなぜ起こっているのかを明らかにすることが、本人の気持ちや行動を理解することに繋がっているといえる。今回のABC分析、MASの診断スケールでの行動分析は有効であった。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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