日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-27-04 重症心身障害児(者)における血清シスタチンC濃度測定による腎機能評価
田村 えり子大石 勉金澤 順内山 晃白井 徳満大瀧 ひとみ
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2019 年 44 巻 2 号 p. 416

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抄録
はじめに 腎機能検査として広く使われている血清クレアチニン(以下、Cre)は筋肉量に影響を受ける。一方、血清シスタチンC(以下、Cys)は年齢、性別、筋肉量、食事などの影響を受けにくいので腎機能評価に適しているといわれている。今回血清CreとCysを同時に測定してそれぞれの推算GFR(以下、eGFR)を求め比較し、重症心身障害児(者)(以下、重症児(者) )に対する腎機能評価へのCys検査の有効性を検討したので報告する。 対象と方法 園生82人(男45・女37:平均年齢52.9歳)と職員254人(男102・女152:平均年齢43.7歳)の定期健診時(2019年2月から3月)において実施。Cys検査はラテックス凝集比濁法(積水メディカル)、Cre検査は酵素法(シノテスト)で施行した。 検定はStudentのt-testとPearsonのカイ二乗検定、p<0.05を有意の差とした。 結果 園生と職員のCre平均値を比較すると園生は職員と比べて有意に低く、一方Cys平均値は園生が職員と比べ有意に高いことが示された。Creが基準値以上の割合を調べると、園生1%に対し職員9%と有意に高かった。またCreが基準値以下の割合は園生54%に対し職員1%であった。Cysが基準値以上の割合は、園生20%に対し職員は11%で有意の差があり、基準値以下は両者で認めなかった。次にeGFRcreでは園生は職員と比べて有意に高値で、良好な腎機能を示した。しかしeGFRcysでは園生は職員と比べて有意に低下しており、腎機能評価に乖離が認められた。eGFRcreとeGFRcysを日本腎臓学会CKD重症度分類GFR区分で比較すると、区分G3a(GFR<60mL/分/1.73㎡)より重症の割合は、eGFRcreでは園生2%に対し職員9%で有意の差があり、eGFRcysでは園生7%、職員2%と有意の差が認められた。 考察 重症児(者)では高頻度で筋肉量が低下することから、園生の76%がeGFRcreの区分でG1(GFR>90)となり腎機能が過大評価された。このG1群をeGFRcysによる区分で評価すると71%がG1、24%がG2、5%がG3a,G3bとなり、Cys検査は腎機能異常をより高感度で検出できることが確認できた。Cre測定は重症児(者)に対する腎機能の指標としては鋭敏でなく、今後Cys測定を積極的に実施しeGFRcysを求め評価するとともに、尿蛋白量の判定も加えてCKDの正確な診断をしていく必要があると思われる。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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