抄録
びわこ学園医療福祉センター野洲では、3例の慢性腎不全患者に治療を行っている。症例を提示するとともに、重症心身障害児(者)の慢性透析療法について考察したので報告する。
症例1は大島分類2の48歳の男性で、慢性糸球体腎炎のため27歳時CAPD(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis)を導入し、29歳時に夜間のAPD(Automated Peritoneal Dialysis)へ変更した。36歳時除水量の減少のため腹膜透析を行いながら週2回他院での血液透析を開始し、38歳時に腹膜透析を終了、以後週2回母同伴で他院での血液透析を続けている。
症例2は大島分類5の43歳の女性で、結節性硬化症のため、両側腎に巨大な血管筋脂肪腫ができ、右腎は腫瘍の破裂のため15歳時に摘出されている。摂食不良のため胃瘻を造設し、腎不全用栄養剤の注入を行っている。血清Crは2.28であるが重症心身障害児(者)では筋肉量が少ないため、血清シスタチンCに基づいてGFRを推算するとGFR13.3で、慢性腎臓病ステージ5の末期腎不全である。エリスロポエチン製剤、降圧剤と球形吸着炭の投与を行い、血液透析を予定している。
症例3は4p-症候群の12歳男児で、大島分類5である。異形成腎のため腎機能は徐々に低下し、現在の血清Cr1.13、GFRは29.1である。皮膚の色素沈着や結節性痒疹が現れ、活動性が低下してきた。摂食嚥下障害のため留置している経鼻胃管から、腎不全用栄養剤を注入し、球形吸着炭を投与している。措置入園のため児童相談所へ連絡をとりながら、父同伴で小児腎臓内科を定期受診し、腎代替療法についての説明を受けている。透析はさせたくないという両親の思いを大切にしながら、多職種で協議を重ねている。
特に症例3において医師としては、血液透析よりも負担の少ない腹膜透析を看護師の協力体制下で行うのがよいのではないかと思う。しかし本人にとって何がベストであるかを考え、今後も納得がいくまで話し合い、施設としての治療方針を出したいと考えている。
申告すべきCOIはない。