抄録
背景
終末期は「医師が治療により病気の回復の可能性がなく死期が近いと判断し、患者・家族および医師・看護師等の関係者が死に至ることを予測した対応を考える時」と考えられる。今回、予後不良の悪性腫瘍と診断された利用者に対し、積極的な診断や治療を行わずに緩和ケア・看取りケアを行い、終末期を迎えた例を経験した。本例の臨床経過を報告するとともに、当園における終末期対応に対する取り組みについても報告する。
症例
16歳時に入園した、脳性麻痺・知的障害の女性で、簡単な会話、経口摂取は可能。66歳9か月時に肺野に多発性肺腫瘍を認めたが、原発巣は特定できなかった。経過中敗血症性肺塞栓症、ANCA関連腫瘍の可能性も考えられたが、家族は侵襲的な診断、積極的な治療を希望せず、組織診断は行えなかった。肺腫瘍は徐々に増大し、胸水貯留を認めたが、呼吸苦を訴えることはなかった。肺腫瘍発見1年6か月後に腹部超音波検査により肝膿瘍を認め、抗生剤治療によっても膿瘍は縮小せず、家族の意向により、緩和ケア、看取りケアを行った。経過中、疼痛を訴えることはなく、家族との面会、職員との会話を心がけ、68歳5か月時に永眠した。
当園における終末期対応
びわこ学園では2017年に「終末期対応に関する手引き」を作成した。2018年に多職種からなる終末期ケア委員会を発足し、センター野洲の「人生の最終段階における対応マニュアル」について検討した。マニュアルには終末期ケアチームの結成、各職種による対応計画の立案、本人、家族への説明と意思確認のための書式などを盛り込んだ。
まとめ
終末期と判断された場合、本人、家族へ病期に応じた説明と意向の確認、チームの職種間の情報共有、共通認識が必要である。今後は当園のマニュアルに基づいて終末期対応に取り組む予定である。
申告すべきCOIはない。