抄録
目的
医療やケアの質の向上により重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))も長期生存が可能となり、それに伴い小児科から成人診療科への移行の問題が生じている。当院では2018年度から内科医と移行カンファレンスを実施し、先ず50歳以上の患者から内科への移行に取り組んだので、移行の状況と問題点をまとめた。
方法
2018年4月時点で小児科を継続受診していた50歳以上の患者を移行対象とし、移行カンファレンスで検討して移行に取り組んだ記録を調査した。
結果
対象者は13人だったが、定期受診が困難な1人と他施設に入所が決まった2人を除く10人について検討した。男性7人女性3人、年齢は50歳〜62歳(平均53.5歳)で、人工呼吸器利用者は含まれず、7人が重症児(者)、1人は四肢麻痺だが知的に正常、2人は独歩可能で単語レベルの発語がみられた。本人と家族に内科での成人期診療の必要性を説明すると、ほぼ移行に納得され、内科に移行したのは8人、内科受診予定が1人、不安からの移行拒否が1人だった。移行の問題点として、小児科からは成人診療科移行の対象者や時期などの条件がわかりにくいという意見があり、内科からは体調や生活状況が安定した状態での移行を望む意見と、将来について移行前から相談しておいてほしいという意見があった。また、移行時に家族状況が変化していたが対応できていなかった例や内科的合併症に気づかれていたが対処できていなかった患者がみられた。
結論
重症児(者)の成人診療科移行については、小児科主治医および家族が成人期診療の必要性による移行を念頭においておくこと、障害の状態および生活状況の変化を確認しながら診療を行い、将来的な見通しを患者家族と共有しながら診療をすることが重要であり、また、移行の条件は今後のカンファレンスでの検討課題と考えられた。不安が強く移行できなかった例についても、内科と併診するなど段階的移行を検討していきたい。
申告すべきCOIはない。