日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-6-07 医療的ケア児等の災害対策
−フローチャートによる平時からの備え−
亀井 智泉
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 44 巻 2 号 p. 444

詳細
抄録
在宅療育中の医療的ケア児等のため、災害対策フロ―チャートと自助プラン作成シートを作成した。災害対策について、「何から手を付けたらいいかわからない」という当事者の声に応えて、発災時の避難行動とその手順を整理・可視化したフローチャートである。自宅や学校等の生活の場の災害リスクを、ハザードマップで把握するところから始まり、避難所とそこへの避難経路、備蓄計画等を、支援者と相談しながら書き込むことができる。それをふまえて、「自助プランシート」に要援護者台帳登録や地域の避難協力者の確保等、平時からやっておくべきことを確認しながら記入を進めていくと、おのずと災害対策の個別支援計画が完成する。 長野県では、圏域の医療的ケア児等コーディネーターの協力を得て、患者家族会等の集いに多職種の支援者や自治体担当者にも参加してもらい、当事者家族と共にフローチャートの記入から災害時個別支援計画作成までを共に行う取り組みを試行した。 実際にはハザードマップの見方がわからない、とか、緊急避難入院先へのルートが水没必至であるとか、きょうだいの学校へのお迎えとの優先順位をどうするか、等の現実的な課題が明確になり、それに伴って備蓄のあり方の再検討や近所の助け合いの必要性等、個々の「やるべきこと」が具体的に明確になった。 支援者は必要な情報の提供にとどまらず、実際の災害のイメージを当事者と共有、可視化しながら、避難の机上シミュレーションを行う。さらに備蓄や電源確保、緊急避難入院先や近隣の助け合いネットワークの確保等、平時からできることを確認・共有した。この結果、特別支援学校での備蓄や電源の確保等、災害に備えた具体的な取り組みにつながった。 医療的ケア児等の災害時個別支援計画をより現実的・具体的なものとして、必要な支援者に共有するのに有効なツールである。 申告すべきCOIはない。
著者関連情報
© 2019 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top