抄録
目的
理学療法における運動効果と栄養の関連性については以前より重要性が指摘されているものの、重症心身障害者入所施設において実際にこれらを関連づけて理学療法を行っているという報告は見当たらない。当施設でも利用者の高齢化が進んでおり、理学療法により身体機能維持を図ってきたが栄養との関連には注目ができていなかった。今回、廃用により身体機能およびADL低下を呈する入所利用者に対し、栄養管理のもと理学療法を実施し、効果検証を行ったので報告する。
方法
廃用による筋力低下および、体重増加、これに伴うADL低下をきたした80代女性利用者1名に対し、たんぱく質摂取量の増加やカロリーコントロールによる体重管理、理学療法介入頻度増加、ADL指導を3か月実施。その後歩行距離や動作分析等身体機能およびBathel Index、FIMを用いたADL能力の評価を行い、その効果を検証した。
結果・考察
身体機能の変化として、立ち上がりおよび移乗動作共に全介助レベルであったものが介助にて可能となり、開始時平行棒内継続歩行可能距離が上肢支持、介助下にて5m程度であったが、研究終了時には歩行器使用、近位監視レベルにて20mの継続歩行が可能となった。身体機能の変化に関しては平行して行ったカロリーコントロールによる体重の減少や、タンパク質摂取量の増加、頻回な動作練習による筋力向上や、運動学習が要因として考えられた。これら身体機能の変化によりBathel Index、FIMを用いたADL評価においても、若干のスコア改善や、動作意欲の向上等も認められた。この結果から、栄養管理と理学療法を関連づける事で重症心身障害施設入所の高齢者においても身体機能の改善や、現在社会的にも問題視されているフレイルの予防が効率的に図れるものと考えられた。
申告すべきCOIはない。