抄録
消化器症状を有した重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))を対象に上部消化管内視鏡検査を施行した。重症児(者)100例の対象者に計165件の検査を施行しており、複数回の検査例は39例であった。基礎疾患は脳性麻痺が主で(痙性65例、アテトーゼ型7例の計72例)、性別・年齢別では男性66例、女性34例で、20歳台と30歳台が最も多かった。内視鏡所見は、胃炎が76例と最も多かった。次に逆流性食道炎が47例で、そのうち食道裂孔ヘルニア(以下、ヘルニア)合併が29例あり、ヘルニアのみは7例であった。潰瘍病変は少なく、胃潰瘍3例、十二指腸潰瘍2例のみであった。病変部位も食道下部や噴門部から穹窿部にかけての胃上部に多く、幽門部などの胃下部の病変は少なかった。ヘルニアに逆流性食道炎が合併する率が有意に高かったが、寝たきり群と座位群での比較では、逆流性食道炎とヘルニアの合併に有意差は認められなかった。治療は、H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤などが使用されるが、今後も定期的な検査が必要である。