日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
シンポジウム1:大地震・大雨など大災害時の支援のあり方
熊本県における災害対応について
東 美希
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 45 巻 1 号 p. 41-42

詳細
抄録

Ⅰ.はじめに 平成28年熊本地震(以下、熊本地震)は、観測史上初めて、同一地域において28時間の間に、最大震度7の地震が二度発生し、熊本市や上益城地域、阿蘇地域を中心に多数の家屋倒壊や土砂災害など、甚大な被害をもたらした(図1)。この地震で、本県の総合周産期母子医療センターである熊本市民病院も深刻なダメージを受け、NICU(新生児集中治療室)やGCU(新生児回復期治療室)、小児病棟の入院患児らは、緊急避難および転院を余儀なくされた。 Ⅱ.熊本地震時の対応              このような中、県は、県内の小児周産期医療の関係者と情報交換や連携をしながら、NICU病床等の調整や、主要医療機関による小児周産期医療提供の補完等、医療提供体制の再構築を行った。幸いなことに、平成27年度に本県の独自の取組みとして、小児在宅医療を提供している医療機関や事業所を対象に、災害時における非常用発電機を整備する補助事業を実施していたことから、熊本地震の停電の際に整備機器が有効に活用され、在宅医療児が安全に避難生活を送ることができた。  Ⅲ.熊本地震後の対応 国は、平成28年12月に、東日本大震災の経験を踏まえ、災害医療コーディネーターと連携して小児周産期医療に関する情報収集や関係機関との調整等を担う「災害時小児周産期リエゾン」の養成を開始した。本県においても、熊本地震の経験を踏まえ、災害時の小児周産期医療の提供体制の強化を図るため、2023年度(令和5年度)までに産科医および小児科医を合計12名養成する方針を定めた(平成31年3月末までに8名養成)(図2・3)。 さらに、この4月には熊本大学と連携のもと、九州各県の小児周産期リエゾンおよび行政職員の顔合わせを行い、九州ブロックでの連携強化を図ったところである。 また、昨年9月に発生した北海道胆振東部地震における大規模停電の実態を受け、特に停電の影響が大きい人工呼吸器を使用する在宅療養児の災害対応を再確認するために、県内の主要な小児在宅医療関係者を招集し、災害時における小児在宅医療提供体制に関する意見交換を実施した。 今後の課題として、ライフラインが寸断するなどの大規模地震が発生した場合に、発災後3日間を乗り切るための平常時からの準備、自助・互助の意識の醸成や地域のつながりの強化、医療的ケア児等の全数把握と具体的な災害時対応の検討が挙げられ、平時からの訓練や災害時の活動を通じて、地域のネットワークを災害時に有効に活用する仕組みの検討を行っているところである。

著者関連情報
© 2020 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top