日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-1-02 重症心身障害児(者)施設におけるCOVID-19クラスターの感染対策
徳光 亜矢浅井 洋子斉藤 剛岩佐 諭美鳥井 希恵子土井 敦竹田津 未生楠 祐一岡 隆治林 時仲
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2021 年 46 巻 2 号 p. 224

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抄録
目的 当園で経験したCOVID-19クラスターをふまえ、重症心身障害児(者)施設における感染対策について検討した。 方法 先にクラスターが発生したA病棟、後から波及したB病棟での対策と感染者数を比較し、対策の有効性を検討した。 結果 A病棟職員の感染判明翌日(X日)、利用者15名(9部屋中6部屋に散在)、職員8名の感染が確認された。全員無症状と思われたが、後から振り返るとすでに軽微な症状が5名にみられていた。X+6日には職員の半数以上が感染、X+10日には利用者の感染が全居室、56名に拡大、最終的に利用者58/60名、職員44/52名が感染した。個人用防護具(以下、PPE)は長袖ガウン、手袋、サージカルマスク、フェイスシールド、キャップで開始したが、利用者が床の上で生活するため2日後にレインズボンとフットカバーを、さらに背中や首周りの飛沫による汚染を防げないためX+7日にタイベックを導入した。B病棟ではX+10日、利用者2名の感染が確認された。この日から5日間、合計11名のB病棟の感染者をA病棟に移し空間のウイルス量を減らし、その間に感染防止対策教育をB病棟職員に行った。X+15日からはB病棟の感染者をA病棟に移棟せず自棟でみたが、A病棟での経験をふまえ、1)軽微な症状でも検査をする、2)PPEはタイベックに変更、3)密着する介護はできるだけ既感染職員が行う、としたところ、A病棟より感染者の発生が少なく、利用者47/60名、職員18/52名で終息した。 考察 有効と思われた対策は、タイベック導入、初期の感染者の移動、職員教育、既感染職員による介護であった。利用者の床の上での生活、密着する介護、食事の際のむせによる飛沫発生などの感染拡大の要因に対し、これらの対策が奏功したと考えられた。 結論 感染対策は施設の構造や介護の特性に合わせた方法を選択する必要がある。またCOVID-19は軽微な症状であることも多く、普段と異なる様子から感染を疑うことが大切である。
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© 2021 日本重症心身障害学会
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