抄録
緒言
新型コロナウイルス感染が猛威を振るう中、飛沫感染や接触感染が主な感染経路であると周知された。口腔ケアはエアロゾル発生手技に分類されるため歯科治療と同様に標準予防策に加えてPPE装着が推奨されるなど、飛沫飛散への対応が重要である。重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は、易感染性のため呼吸器感染症に罹患しやすく口腔ケア時の飛沫飛散防止への配慮が必要となる。今回口腔ケア各手法による飛沫飛散状況を確認し、重症児(者)へのケア方法の再考を行った。
方法
患者役は水平仰臥位で口元を切り抜いた白紙を上から被せ、術者役は12時の位置で歯磨きを行った。実施手法は歯ブラシ、歯ブラシ+口腔ケアティッシュ(ティッシュ)、歯ブラシ+口腔ケアジェル(ジェル)、歯ブラシ+口腔外バキューム(口腔外バキューム)、吸引歯ブラシの5通りとした。歯磨きはスクラビング法にて1ブロック30秒×6回(全顎)とした。各手法で異なる着色水を作成、紙面上の飛沫数をカウントした。さらに飛沫の最長距離を計測した。
結果
合計飛沫数(個)は吸引歯ブラシ1520、歯ブラシ1124、ティッシュ625であり、ジェル、口腔外バキュームでは60以下と大幅に少なかった。最長飛散距離(cm)は歯ブラシ102、吸引歯ブラシ89、他3法は40以下であった。各区域の飛沫数の比較ではジェルと口腔外バキュームの飛散数は他3法に比較して有意に少なかった( p<0.01)。ジェルと口腔外バキュームの差はなかった。飛沫箇所では患者役の胸部への飛散が最多であった。
考察
飛沫飛散防止として、口腔外バキュームの有効性は周知であるが、口腔ケアジェルを用いた歯磨き方法が同程度飛沫を減少する可能性があることが示唆された。吸引歯ブラシは飛沫が少ないように思われたが、歯ブラシのみと同程度の飛沫があり、十分な注意が必要と考えられた。