抄録
症例は2歳の男児。在胎35週4日、出生体重2508gで常位胎盤早期剝離による新生児仮死で出生し、重症心身障害児となり1歳8か月で当施設へ入所された。2歳9か月で尿路感染を発症しcefaclor(以下、CCL)の内服を開始した。内服3日目に貧血傾向(Hb:9.6g/dl)を認め、5日目には重度な貧血(Hb:5.0g/dl)まで進行した。薬剤性貧血を考慮しただちにCCLを中止したが貧血はさらに進行した。原因精査を行ったところ直接クームス試験が陽性であったため、CCLによる薬剤性溶血性貧血と診断しプレドニゾロン(以下、PSL)の投与を開始した。PSL内服開始後、5日目より貧血傾向が止まり徐々に改善していった。セフェム系抗生物質は臨床現場で頻回に使用する機会のある薬剤であり、特に重症心身障害児(者)は尿路感染のリスクが高く使用頻度が高く、薬剤性溶血性貧血は注意が必要な疾患である。