抄録
【目的】重症心身障害児(者)施設長期入所者における、低亜鉛血症の治療について検討した。【対象・方法】2018年4月から2019年11月までの間に新規に低亜鉛血症に対する治療を開始した22名を対象とした。血清亜鉛値60~79μg/dlの15例はココア14g(亜鉛1 mg含有、ココア群)、60μg/dl未満の7例は、ポラプレジンク®75mg/日(亜鉛17mg含有、少量亜鉛製剤群)を投与し効果を検討した。【結果】治療前後の血清亜鉛中央値はココア群、少量亜鉛製剤群で、それぞれ70μg/dlから73μg/dl、57μg/dlから97μg/dlへと両群とも有意に上昇していた。治療後血清亜鉛値は、少量亜鉛製剤群の方が有意に高値を示した。基準値内となった有効例はココア群33.3%に対し、少量亜鉛製剤群71.4%であった。両群とも低銅血症を来した症例はみられなかった。【結論】ココアによる食事からの亜鉛補充は有用ではあるものの効果は限定的であった。亜鉛製剤による補充量に関しさらに多数例での検討が望まれる。