抄録
ボリコナゾール (VRCZ) は Candida 属、Aspergillus 属などを含む幅広い抗真菌スペクトルと強い抗真菌活性をもつ新世代のトリアゾール系抗真菌薬である。主要な作用メカニズムとしてチトクロム P450 酵素依存性のラノステロール・14-αデメチラーゼを阻害することが知られているが、その結果として真菌の発育形態がどのように変化するかについては報告がない。そこで、A. fumigatus 発育菌糸に及ぼす VRCZ の影響を細胞学的に検討した。RPMI 1640 培地で培養した本菌発育菌糸に VRCZ を作用させ、FUN-1 生体染色法を用いた viability の変化、および電子顕微鏡による微細形態の変化を観察した。最小発育阻止濃度付近の濃度で作用させた場合でも、5 時間後には約半数の菌糸ですべての菌糸細胞が死滅し、微細構造の観察からは、菌糸先端の細胞壁内部、および細胞壁と細胞膜の間空隙に高電子密度の小胞構造の蓄積が認められ、細胞内部には液胞様空胞が多数形成されていた。48 時間後には大部分の菌糸が死滅し、細胞内空胞形成、細胞膜の剥離・断裂、細胞質電子密度の低下が顕著に認められた。VRCZ を作用させた真菌細胞においては従来のアゾール系薬と同様細胞壁内に高電子密度の小胞構造が形成されるようであったが、細胞内空胞化についてはこれまでに報告例がない。この変化はAspergillus に対する VRCZ の強力な殺菌作用を説明する細胞障害像の一つと考えられた。