抄録
【目的】Stachybotrys chartarum は土壌や住環境等から検出される真菌である。我々はこれまでに本菌胞子の気道内投与によりマウスの肺の血管周囲間質に炎症細胞浸潤が認められることを明らかにした。そこで今回は本菌を長期間反復投与した場合の肺に及ぼす影響を検討した。
【方法】我国の家屋から分離された S. chartarum の胞子を 2 週間に 3 回ずつ経気道的にマウスに投与し、計 6、8、10、12、18 回投与終了後の肺をはじめとする諸臓器について病理組織学的検討を行った。また血管内皮細胞に本菌の洗浄液を添加して培養し、細胞傷害性及びサイトカインの mRNA 発現を調べた。
【結果および考察】肺動脈周囲に分葉核白血球を含む炎症細胞浸潤が見られるとともに、胞子を6回投与すると肺動脈壁の肥厚が見られ、炎症細胞の消退とともに内腔の狭窄が進行して 10 回以上の投与で内腔の狭窄あるいは閉塞が認められた。これらの血管病変が認められたマウスの割合は 12、18 回投与で 40.0%、63.6% であった。また本菌洗浄液は血管内皮細胞に対し、アポトーシスの誘導、IL-6 の mRNA 発現を亢進させる作用を有していた。本モデルは原発性肺高血圧症(PPH)等のような原因不明の肺循環障害の研究に寄与することが期待され、現在検討を進めている。