本研究では,音楽作品の感情価の評定に気分がどのように影響するかを調べた。実験1では,被験者はビデオ視聴により気分誘導された後,抑鬱的な音楽または明るい音楽を聴きながら,感情価を評定した。実験2では,被験者は,強くて荘重な音楽または親和的で荘重な音楽を聴きながら,感情価の評定を行った。実験3では,ニュートラルな感情価をもつ音楽の評定を行った。その結果,特徴的な感情的性格をもつ作品の評定では,気分の影響は殆どみられなかった。しかし,ニュートラルな感情価をもつ作品は,悲しい時にはより抑鬱的に評価され,楽しい時にはより落ち着いた音楽として評価された。すなわち,よりニュートラルな感情価をもつ音楽作品ほど,気分の影響をより強く受けることが示唆された。