2015 年 12 巻 p. 57-70
本研究の目的は、日本人学生の内向き志向の心理的要因を検討することである。近年、日本人大学生には内向き志向があると言われているものの、内向き志向を構成する要因およびその原因について十分に検証されているとは言い難い。
一方、日本と文化的に価値観を共有する韓国では留学生が年々増加している。本研究では、韓国人学生との比較に基づき、内向き志向と達成動機の関連性を検討して、日本人の「内向き志向」の特徴を明らかにする。
内向き志向を測定する国際交流欲求因子を特定し、その尺度得点を基に独立したサンプルのt 検定を行った結果、日本人は韓国人に比べて国際交流欲求得点が有意に低く、また達成動機を測る社会的達成欲求や挑戦・成功欲求の各尺度得点も有意に低かった。さらに2要因分散分析の結果から(a)日本人大学生の国際交流欲求は達成動機によって2極化していること、(b)一般的に言われる日本人の内向き志向は達成動機の低い学生の特徴を反映していることが示唆された。以上の結果を踏まえて、達成動機が低い学生を対象とした教育プログラムの導入など、学生の内向き志向を改善するための対策について議論した。