抄録
本稿では、民族学級の民族講師と教職員が協働する公立小学校を事例に、協働関係への転換期と考えられる1970 年代に焦点をあて、非対称関係をいかに協働関係へと変容させることができるのか、その変容過程を明らかにすることを目的とする。調査の方法は、民族学級の記念誌と1970 年代の在日朝鮮人教育実践に関わった当事者に半構造化インタビューを実施し、得られたデータを用いて分析した。分析の結果、日本人教師による組織としての朝鮮人教育研究部の創設が、日本人教師に朝鮮人児童の生活実態の把握と社会的差異の認識を促し、民族講師が自身の思いや考えを伝える議論の場を生み出したことで、民族講師と日本人教師との関係の変容に寄与したのがわかった。民族講師と共に取り組む在日朝鮮人教育の目標を掲げ、教科学習に朝鮮についての学びを取り入れることで、民族講師と日本人教師との交流や相互作用が生まれ、影響を及ぼし合う新たな関係へと変容していく。更に関係が深化することで双方が主体化し、在日朝鮮人教育の新たな教育実践が展開され、民族講師と日本人教師の関係は、協働関係へと変容していく。踏まえて最後に学校教育における協働という視点から、本稿の今日的意義を述べた。