2022 年 45 巻 3 号 p. 135-143
多項目水質計を取り付けた自動昇降装置を用いて夏季における北浦の水温, 溶存酸素濃度, 酸化還元電位の鉛直分布を高頻度に調査することで, 水温成層および貧酸素水塊の形成や消失過程を検討した。さらに, 自動採水機で詳細な水質調査も行うことで現場における底泥からのPO4-P溶出速度を検討した。その結果, 水温成層の形成条件は気温25 ℃以上, 風速6.0 m s-1未満であること, 消失条件は風速6.0 m s-1以上が2時間以上吹くこと, Friの値が0.3から1.0へ増加すること, Weの値が0.5から0.1未満へ減少することが示唆された。貧酸素水塊は水温成層の形成後1~2日で形成し, 水温成層と同時に消失することが明らかとなった。貧酸素水塊形成時の下層のPO4-P濃度の上昇が全て底泥由来であると仮定すると北浦の夏季における現場観測によるPO4-P溶出速度は99.1 mg m-2 d-1以上になると推定された。