抄録
本研究は,看護技術のイノベーションといえる褥瘡ケアの日本における普及過程を,文献レビュー,普及を裏付ける資料,インタビュー調査により明らかにし,その結果をロジャーズのイノベーション普及理論に基づき分析を行い,普及に影響した要因を明らかにする事例研究である.褥瘡ケアの普及の第一の促進要因として,課題とする現象に深く関心を寄せ活動を行う複数のチェンジ ・ エージェントの存在があげられた.チェンジ ・ エージェントを核として,現場で技術を示すことのできるローカルオピニオンリーダーが多数存在し実践活動を行っていること,マスメディアや学会等をはじめとするさまざまなコミュニケーション ・ チャンネルを有効活用したことも普及に関連した.また,イノベーションの科学的根拠を蓄積する研究が,基礎研究も臨床研究も積み重なっていなければならないことも示された.褥瘡ケアに特有な要因として,長年の褥瘡ケアへの不全感,成果が目に見えることがあげられた.