日本看護技術学会誌
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13 巻, 3 号
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原著
  • 松村 千鶴, 深井 喜代子
    2014 年13 巻3 号 p. 188-199
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,綿タオルと化繊タオルの素材の違いが清拭効果に及ぼす影響を比較することである.健康女性16名を対象に,タオルの種類を変え,異なる日に同じ方法で背部と四肢の部分清拭を実施した.タオル素材には綿タオルと化繊タオルを用い,大きさを47×17㎝に揃え,素材には200mLの同量の水分を含ませた.タオルはすべて恒温器で加温し,55.0±0.2℃に保った.清拭効果の評価には皮膚温,深部温,血圧,心拍 (HR),POMS短縮版,覚醒度とリラックス度 (VAS),素材の肌触りのリッカートスケールの多次元指標を用いた.その結果,どちらの素材を用いた場合も清拭実施中には,一時的な心拍数の減少,清拭終了後にはPOMSの評点の減少,覚醒度の低下,リラックス度の増大が,それぞれ有意に認められた (P <0.05).自律神経活性は清拭によって著明に変化しなかったが,綿タオルによる清拭実施中にのみ交感神経活性 (LF/HF) が有意に低下していた (P <0.05).両素材ともに清拭開始後から前胸部,前腕の皮膚温,そして深部温が暫時上昇した (P <0.05).化繊タオルでは,さらに末梢部 (前腕,右手指先) の皮膚温も上昇した (P <0.05).一方,清拭終了後の肌触り感は,化繊タオルのほうがより適度な柔らかさと評価されていた (P <0.05).以上のことから,化繊タオルと綿タオルは部分清拭ではほぼ同等の良好な清拭効果を示すものの,保温性と肌触り感では化繊タオルのほうが優れていることが分かった.
研究報告
  • ―温湯清拭タオルとの経時的温度比較―
    小林 甫, 山田 美季, 池田 雪花, ガンゾリグ オチゲレル, 渡辺 玲奈, 矢野 理香
    2014 年13 巻3 号 p. 200-210
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,電子レンジによる清拭タオルの加熱方法を加熱効率とタオル温の持続性から検証し,温湯清拭タオルとの経時的温度変化を比較することである.清拭タオル8枚の形状と配置を組み合わせ,7つのパターンを考案した.調査方法は,各パターンを電子レンジで3分間加熱し,加熱直後のタオル中心部温度,表面最高温度,表面平均温度を測定した.つぎに,7パターンのうち最も加熱効率がよく,タオル温の持続性が高いパターンを選出し,50℃の温湯で準備をしたタオルとの経時的温度を比較した.その結果,温湯清拭タオル温以上を最も長く持続していた電子レンジ加熱によるタオルは,たたみ1列8段密着パターンであった.このパターンでは,表面最高温度は12分まで温湯清拭タオル温を上回った.しかし,中心部温度と表面平均温度は10分以降で温湯清拭のタオル温を下回ったことから,使用時間,用途や状況に合わせて温湯清拭と使い分けることが必要であると考えられた.
  • 二見 朝子, 工藤 有紀, 埜本 竜哉, 下田 智子, 良村 貞子
    2014 年13 巻3 号 p. 211-218
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     【目的】他患がいる病室において,患者が話しやすいと思う看護者の立ち位置を明らかにする.【方法】擬似病室で,模擬患者に話しやすいと思う位置の回答を求める準実験研究を行った.パーソナルスペース (以下PS) は被験者の頭頂から半径120cm以内とした.【結果】話しやすい距離の平均は134.7±26.9cmであった.また,PSの120cm以内が話しやすいと答えたのは30.4%であり,120~130cmと答えたのは26.1%であった.さらに,看護師役の立ち位置を被験者の頭頂から45°±10°の範囲と答えた被験者は65.2%であった.【結論】1.話しやすい立ち位置は,被験者の頭から120~130cm程度離れたベッドに近い足元側が目安である.2.話しやすい立ち位置は,45°±10°の範囲内に約7割が集中した.3.会話を重ねると,話しやすい位置は近くなる可能性がある.4.看護師側が考える話しやすい距離と患者側が考える話しやすい距離は異なる可能性がある.
  • 塚越 みどり, 船越 健悟, 菱沼 典子
    2014 年13 巻3 号 p. 219-229
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     19~24歳の健康な成人期女性21名に,蒸しタオルによる60℃10分間の背部温罨法を仰臥位で行った.同一対象者へ実験群 (罨法あり),コントロール群 (罨法なし) を実施し,上半身8部位の皮膚表面温,皮膚血流量を測定し,実施前と比較した.適用部位以外で最も速やかに,高く上昇した部位は,第3指皮膚温であり,罨法10分は1.2℃,罨法後30分は1.7℃上昇し,同部位の皮膚血流量は,罨法中に1.5倍,罨法後30分は1.3倍となった.罨法中,罨法後の背部,後頸部,前胸部,手掌,手背,右第3指の皮膚表面温は,実験群がコントロール群より高く,有意差があった.上腕,前腕の皮膚表面温は,群間の有意差がなかった.仰臥位における60℃10分間の背部温罨法は,末梢の皮膚表面温がすみやかに上昇し,罨法後30分でも1℃以上の皮膚温の上昇が持続することをふまえて適応,実施時期を判断する必要がある.
実践報告
  • 葛西 英子, 荒井 悦子, 及川 正広, 三浦 奈都子, 武田 利明
    2014 年13 巻3 号 p. 230-236
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     点滴漏れによる皮膚傷害は,疼痛や腫脹などを呈し,潰瘍など重症化にいたる場合もある.しかし,看護師の点滴漏れへのケアに対する認識は異なっており,そのケアに一貫性がなかった.そこで,安全で効果的なケアを提供するために検討を行い,ゴム製のディスポーザブル手袋で氷嚢を作製し,心地よい温度 (17℃前後) での冷罨法をマニュアル化し統一して実施した.その結果,患者からも冷罨法に対して「気持ちよい」との声が聴かれ,重篤な悪化は認められず,一定の効果を得ることができた.
短報
  • 松村 千鶴, 深井 喜代子
    2014 年13 巻3 号 p. 237-242
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,3種類のディスポーザブルウェットタオルの違いが清拭効果に及ぼす影響を比較することである.健康女性13名を対象に,タオルの種類 (メッシュ状厚型,厚型と薄型の不織布) を替え,異なる日に背部と四肢の部分清拭を行った.タオルは大きさを揃え,タオルの温度は恒温器で加温し55.0℃に準備した.清拭効果の評価には深部温,体表温,血圧,心拍 (HR),POMS短縮版,覚醒度とリラックス度 (VAS),素材の肌触りのリッカートスケールを用いた.その結果,3素材ともに終了直後の深部温が有意に上昇した.不織布 (厚型・薄型) では自律神経活性に著明な変化はなく,薄型では終了直後に両踵部の上昇,柔らかい肌触り感で高評価,POMSの緊張-不安の評点の減少,覚醒度の低下 (P <0.05) がみられたが,厚型では終了直後に体表温が低下し,POMSの混乱の評点が有意に上昇した.メッシュ状厚型では終了直前の副交感神経活性 (HF) の上昇,終了直後に両踵部の体表温の上昇,血圧の低下,POMSの活気,混乱の評点の減少 (P <0.05) がみられた.以上の結果から,3種類のタオルを用いた部分清拭において,保温性と肌触り感で不織布薄型が最も優れていることが分かった.
  • 松村 千鶴, 深井 喜代子
    2014 年13 巻3 号 p. 243-246
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,感染予防の観点から綿タオルと化繊タオルのどちらが清拭素材に適しているかを比較することである.タオル素材には,市販の使用前の綿タオル (未使用綿タオル),清拭で使用したあとに洗浄・消毒した綿タオル (再生綿タオル),市販の未使用の化繊タオル (湿性不織布),そして湿性不織布から水分と含有成分を除去した化繊タオル (乾燥不織布) の4種類を選んだ.これら4素材の一般生菌,大腸菌,黄色ブドウ球菌の生存数を,ペトリフィルム法を用いて調べた.その結果,一般生菌は,湿性および乾燥不織布ではほぼ陰性であったが,未使用綿タオルからは約260cfu/100cm2 (衛生上問題なし),再生綿タオルからは未使用時の10倍もの約2,360cfu/100cm2がそれぞれ検出された.一方,大腸菌と黄色ブドウ球菌は4素材いずれからも検出されなかった.本研究の結果から,わが国の臨床の場で多用されている再生綿タオルには感染予防上,無視できない量の一般生菌が棲息する可能性が示唆された.未使用・再生にかかわらず綿タオルに一般生菌が検出されたことから,再生綿タオルは感染予防の観点から安全な清拭素材でないことが明らかとなった.
その他(ミニ総説)
  • 柿原 奈保子
    2014 年13 巻3 号 p. 247-250
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     近年,メディカルアロマセラピーは,補完・代替医療の有望な治療法の一つとして,医療経済の観点からも注目されている.日本では,英国式アロマセラピーが普及しており,種々の疾病における精油の一定の治療効果に対するエビデンスの蓄積が不十分である.それ故に,日本にメディカルアロマセラピーを補完・代替医療として普及させるためには,精油の投与法やその効果に対するエビデンスを確立することが必要である.
     本論文では,わが国のメディカルアロマセラピー研究の最近の動向を検討するために,データベースソフト医学中央雑誌を使用して2011年から2013年11月までの精油を用いた研究を調査した.キーワードは「精油」,「効果」,検索文献は「原著」,「総説」,「会議録」である.研究総数は136件であり,基礎医学実験85件 (約62.5%),臨床症例研究42件 (約30.1%),文献調査や意識調査9件 (約6.6%) であったが,生体内で精油が,どのような機序で作用して効能を発揮しているかを分析的,詳細に検証した研究はほとんどみられなかった.この結果は,精油の効能に関する分析的研究を推進する必要があることを示唆している.本論文では以上の背景を踏まえて,メディカルアロマセラピーの将来展望について述べた.
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