抄録
本研究の目的は, 留置針を用いた点滴静脈内注射において, 熟練看護師が行う穿刺部位選定のための, 観察と動作の特徴を明らかにすることである.
2年目から3年目の看護師 (以下, 比較群) 11名, 熟練看護師13名を対象に, 留置針を用いた点滴静脈内注射実施の条件下で, 模擬高齢患者の前腕部に穿刺部位を選定するまでの実施を依頼し, 録画した. 録画した動画をもとに穿刺部位選定のための観察項目, 各動作の目的などについてインタビューを実施した.
その結果, 触診時の手指の動作は, 比較群9種類, 熟練群11種類の合計12種類が抽出された. 部位選定時間は, 熟練群147.4±83.2秒, 比較群111.8±37.2秒であったが, 観察項目数, 動作数なども含めて, 2群間に有意な差はなかった. 比較群は, 左手背静脈網, 右前腕尺側皮静脈などに選定部位が点在する傾向があるのに対し, 熟練群の61.5%は, 左前腕橈側皮静脈を選択し, 選定部位が集中している傾向にあった.