本研究では抗がん剤投与による静脈炎を, ウサギを用いて作製し静脈炎の病態を組織学的により詳細に観察すること, 作製した静脈炎に対し臨床で行われている罨法を実施し, その効果について組織学的に検討することを目的に実験を行った. その結果, 肉眼的には薬液注入後は6匹すべてのウサギで耳介静脈と周囲の血管が拡張し, 24時間後には耳介静脈の拡張とともに耳介に発赤を認め, 72時間後には耳介に強い発赤がみられ, 大きな違いを認めなかった. 組織学的には, 24時間後は耳介静脈周囲に浮腫がみられ, 血管内皮の傷害や血栓を認め, 72時間後にはその程度が重篤化していた. 72時間後の病態を比較すると, 薬液注入のみ施行したウサギが最も重篤で, ついで薬液注入後に温罨法を施行したウサギ, 薬液注入後に冷罨法を施行したウサギが最も病態が軽度であった. これらのことから, 静脈炎発生時に行う看護ケアとしては冷罨法が温罨法よりも静脈炎の病態を軽症にとどめる可能性がある.