抄録
本研究は身体接触を用いた会話中の2者間の心拍変動の同期現象, 自律神経活動指標および主観的指標の変化を検討することを目的とした. 健康な18歳以上の男女49名を対象に, 同性かつ同年代の初対面のペアを作成し, クロスオーバー試験を行った. 実験課題として, 介入群は会話に加え, 身体接触を行った. 対照群は会話のみを行った. その結果, 心拍変動の同期現象は確認できたが群間で有意差はみられなかった. 介入群の自律神経活動指標は緊張状態からの緩和を示した. 主観的指標は, 会話中の快感情, 相手への印象, 身体接触の有効性に関して, 介入群の方が有意に高かった. 加えて, 身体接触されることへの抵抗感と多くの項目に相関がみられた. これらの結果から, 有効な身体接触を行うためには, 相手だけでなく, 自身がもつ身体接触に対する認識や抵抗感についてもアセスメントをする必要性があることが示唆された.