2024 年 23 巻 p. 57-65
本研究の目的は, 脳機能の測定結果に影響を及ぼす皮膚血行成分を除去することによって, 前腕浴が脳の血行動態に及ぼす影響を明らかにすることである. 先行研究では, 末梢温熱刺激が前頭前野の血流増加を誘発することが近赤外分光法により示されている. しかし, これらの結果は皮膚血流と脳血流の両方が含まれている可能性があり, 前腕浴によって脳が活性化されるかどうかは未だ不明である. そこで本研究では血行動態データから脳機能成分を抽出し, 前腕浴による前頭前野の活性化について検討した. 健常成人25名を対象に42.0±0.1℃の湯で前腕浴5分を実施した. 評価指標は抽出した皮膚成分を除いた脳機能成分である前頭前野のOxy-Hb濃度および主観的気分とした. その結果, 両側前頭前野のOxy-Hb濃度変化は, 前腕浴の方が非前腕浴よりも有意に高値を示した. 温熱感とリラックス感の変化は, 非前腕浴より前腕浴の方が有意に高値であった. 以上により前腕浴は両側前頭前野を活性化させることが示唆された.