日本看護技術学会誌
Online ISSN : 2423-8511
Print ISSN : 1349-5429
ISSN-L : 1349-5429
最新号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 松島 あみ, 先﨑 百花, 伊藤 夕純, 窪澤 花怜, 野澤 沙耶香, 渡邉 はなの, 松山 友子, 久保田 貴博, 髙橋 智子
    原稿種別: 原著
    2025 年24 巻 p. 27-36
    発行日: 2025/08/20
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     目的:アンプルカットにおける示指固定がアンプルの切断面・切創の有無に及ぼす影響を明らかにした.
     方法:学生34名を対象に2mlと5mlアンプル (以下, 2ml・5ml) カット時に示指を固定する方法 (以下, 示指固定あり) および固定しない方法 (以下, 示指固定なし) を実施し, アンプルの切断面・切創の有無・関節角度を測定した. アンプルの切断面はWilcoxon符号付順位検定で比較し, 切創の割合, アンプルの切断面と関節角度の相関係数を算出した.
     結果:アンプルの切断面は2ml・5mlともに示指固定ありの鋭利性が有意に低かった (p<.01). 示指固定ありの切創はなく, 示指固定なしは手袋の破れが2mlで11.8%, 5mlで17.6%であり, 手指の切創も2mlで2.9%であった. 示指固定あり5mlの関節角度の左右差がないほど, アンプルの切断面の鋭利性が低かった (r=.46, p<.05).
     考察:アンプルカット時の示指固定は, アンプルカットに不慣れな学生の切断面の鋭利性および切創発生率を低下させることが示唆された.

  • 紺谷 一生, 安田 佳永, 宍戸 穂, 出塚 望, 矢野 理香
    原稿種別: 原著
    2025 年24 巻 p. 37-46
    発行日: 2025/08/20
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     清拭時の過度な摩擦刺激はさまざまな皮膚障害を引き起こすリスクを有し, 清拭圧はケアの質を左右する. しかし, 看護学生に清拭圧の重要性を伝え, どのように実践すべきかを教育するプログラムはこれまで存在しなかった. 本研究の目的は, 看護学生の最適な清拭圧習得を促す新たな清拭技術教育プログラム (清拭圧教育プログラム) を開発することである. 本研究は対照条件を伴う1群前後比較デザインとし, 2年次看護学生21名を対象とした. 対象者は通常講義・演習 (対照条件) の約1ヵ月後に経験学習モデルを理論的基盤とした清拭圧教育プログラム (介入条件) を受講した. 清拭圧は対照・介入条件の前後に測定し, 最適な清拭圧である弱圧 (10-20mmHg) の習得率を条件間比較した. 知識テストは対照・介入条件後に測定した. 清拭圧教育プログラムは通常講義・演習にくらべて, 弱圧清拭習得率と知識テスト総合点を統計学的に有意に高め, その有用性が示された. 弱圧清拭習得には知識の提供だけでは不十分であり, 経験学習による清拭圧の体感が重要になると推察された.

資料
  • 菊池 佑弥, 野里 同
    原稿種別: 資料
    2025 年24 巻 p. 47-51
    発行日: 2025/08/20
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     目的:ドパミン塩酸塩の血管外漏出が皮膚傷害に及ぼす影響を血管収縮作用の異なるカテコラミン製剤を用いて比較検討することである.
     方法:ドパミン塩酸塩とそれより血管収縮作用の弱いドブタミン塩酸塩を用いてラットの背部皮下に実験的な漏出性皮膚傷害を作製し, 実験後1, 2, および3日目に肉眼的観察を行った.
     結果:ドブタミン塩酸塩群では, 血管外漏出後に発赤や潰瘍形成が認められ, 一部の症例では皮膚傷害が悪化した. 一方, より強い血管収縮作用をもつドパミン塩酸塩群では, 皮膚傷害は認められなかった.
     考察:ドパミン塩酸塩より血管収縮作用の弱いドブタミン塩酸塩において皮膚傷害が悪化したことから, 薬理作用である血管収縮作用以外の要因が影響している可能性が示唆された.

  • 磯辺 彩乃, 大岩 莉子, 菊池 昌美, 黒瀬 優奈, 佐藤 結香, 松山 友子, 吉良 理絵, 髙橋 智子
    原稿種別: 資料
    2025 年24 巻 p. 52-59
    発行日: 2025/08/20
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     目的:看護基礎教育におけるアンプルカットの手技に関するテキストの記載内容および提示方法を明らかにし, 安全なアンプルカットの教育方法を検討する.
     方法:アンプルカットの手技の記載がある和文・英文テキスト29件を対象に, アンプルカットの基本動作の《把持する》《力を加えて折る》《手と手を離す》の内容と提示方法を抽出し, 質的に分析した.
     結果:《把持する》はカットマークと指の位置を示す画像の提示が多かったが, 実施者目線ではない画像もあり, 位置や向きが読み取れないものもあった. 《力を加えて折る》は折る部位・起点・方向の3要素の一部が欠けるもの, 明確に伝わりにくい説明があった. 手の方向・腕の使い方は根拠の説明や画像提示が少なかった. 《手と手を離す》は動画の提示が最も多く, 英文テキストのみに根拠の説明が記載されていた.
     考察:安全なアンプルカットのためには, 動作の目的や根拠, 把持する部位や方向を補い教育する必要性が示唆された.

  • 檜山 明子, 吉田 実和, 高橋 葉子
    原稿種別: 資料
    2025 年24 巻 p. 60-67
    発行日: 2025/08/20
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究は, 看護基礎教育課程における血圧測定技術教育に関する文献をスコーピングレビューし, 教育効果の評価と教育方法の特徴を明らかにすることを目的とした. 検索語はnursing education (看護教育), blood pressure measurement (血圧測定), nursing student (看護学生) を用いた. 分析対象は14編であり, 評価には実技の行動評価, 測定値の読み取り精度, 学生の不安や自信, 患者との相互作用があった. 教育方法には, 教材, 講義の追加, 学生の省察を促進する, 不安や自信に働きかける方法があった. しかし, 学生の心理状態と血圧測定技術の関係は十分検討されていなかった. 以上の結果から, 血圧測定技術の評価と教育方法が概観でき, 看護学生の心理状態と技術習得との関連の教育方法改善に向けて必要な研究課題が明確になった.

実践報告
  • 郡 ハルミ, 田中 美智子
    原稿種別: 実践報告
    2025 年24 巻 p. 1-8
    発行日: 2025/04/20
    公開日: 2025/04/20
    ジャーナル フリー

     本研究は, 高齢者の転倒予防を目指す簡便な支援の予備的研究と位置づけ, 若年者を対象に熱布温罨法が足浴に劣らない方法であることを明らかにし, 足部に及ぼす効果を比較することを目的とした. 若年健常者26名 (22.1±2.1歳) に足浴 (40±1℃) と熱布温罨法 (60℃の高温槽の湯で絞ったタオルを2枚使用) を10分間実施した. 評価項目は膝窩深部温度 (温熱効果), 足関節背屈角度 (足関節の柔軟性), 足趾把持力 (姿勢保持力) である. 膝窩深部温度の非劣性検定では熱布温罨法が足浴に劣らない温度の上昇が得られることが確認された. どちらの方法も膝窩深部温度, 足関節背屈角度, 足趾把持力が向上し, 効果の比較では左足関節背屈角度で熱布温罨法の方が有意に拡大した. 熱布温罨法が足浴に劣らないだけでなく, 足浴より効果が得られる場合もあり, 高齢者の転倒予防を目指すケアとしても期待される.

  • 岡本 佐智子, 中村 睦美, 光樂 香織
    原稿種別: 実践報告
    2025 年24 巻 p. 9-16
    発行日: 2025/04/20
    公開日: 2025/04/20
    ジャーナル フリー

     患者は健康な人と異なり, 身体的な苦痛から長時間, 同一体位を保つことが困難であり, 浮腫などにより皮膚表面に強い圧をかけられないことが多い. このような患者にも活用できるタッチングの手法を検討するために, 健常成人12名を対象に, 介入時間が5分間で皮膚表面の圧が10gf/cm2で, 3cm/秒の速さで実施したタッチングの生理的・心理的効果を検証した. その結果, タッチングの介入前と比較して, 介入直後と介入10分後について, 有意に皮膚温が上昇し, 脈拍数が減少した. 心理尺度を用いてリラクセーション効果を測定した結果, タッチングの介入前と比較して, 介入直後と介入10分後について, 有意にリラックス度が高まる方に数値が変化した. このことから, 短時間の弱い力で実施するタッチングのリラクセーション効果を示すことができた.

  • 石井 遥, 堀 悦郎
    原稿種別: 実践報告
    2025 年24 巻 p. 17-26
    発行日: 2025/04/20
    公開日: 2025/04/20
    ジャーナル フリー

     コミュニケーションを効果的に行うために, ベッドサイドの環境調整は看護実践において重要な課題である. 本研究は, ベッド上における対象者の姿勢がコミュニケーションに与える影響を明らかにすることを目的とした. 一般的な床上姿勢とされる仰臥位および床上背面開放座位を比較検討し, 健常者を模擬患者として主観的な話しやすさおよび自律神経活動を測定した. その結果, 床上背面開放座位は仰臥位よりも主観的な話しやすさが有意に高く, 交感神経活動が抑制される傾向が認められた. 一方仰臥位では, 主観的な話しやすさと交感神経活動が有意な負の相関にあった. これらの結果から, 床上背面開放座位は仰臥位に比してコミュニケーション時の心理的・身体的負担が軽減されたことが示唆された. 本研究の結果から, 患者の「話しやすさ」を促進するためには, 患者の姿勢を調整する必要があることが示された. また, 心拍変動解析は看護現場において話しやすい姿勢を調整するための指標として活用できる可能性が示唆された.

feedback
Top