日本看護技術学会誌
Online ISSN : 2423-8511
Print ISSN : 1349-5429
ISSN-L : 1349-5429
短報
部分温浴がもたらす皮膚保湿効果
岡田 ルリ子徳永 なみじ相原 ひろみ宮腰 由紀子
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 9 巻 3 号 p. 45-49

詳細
抄録

 本論文は,皮膚生理機能を維持する看護技術の開発に向けて,部分温浴の温熱刺激によって増加した皮膚血流が角層に水分を与え保湿する,というわれわれが提起した作業仮説を検証したものである.片側手部のみ10分間温浴し,対側前腕で,皮膚血流の増加を示す指標としての皮膚表面温度,および角層水分量 ・ 水分蒸散量を測定した.その結果,皮膚表面温度 ・ 角層水分量は上昇 ・ 増加し,温浴終了後も一定水準を保持した.一方,水分蒸散量は温浴により急増したが,温浴終了後はもとに戻る傾向を示した.また,皮膚表面温度と角層水分量はかなりの相関を認めたが,皮膚表面温度と水分蒸散量は無相関であった.以上より,“部分温浴の温熱刺激により増加した皮膚血流は,角層への水分供給を行い,皮膚表面からの緩徐な水分蒸散を促すが,その刺激は穏やかであるため,温熱刺激終了後の皮膚血流は速やかに平常化し水分蒸散を抑える.よって,一度角層に供給された水分は蒸散せずに貯蓄され保持される” という仮説を支持する結果を得た.今後,皮膚血流量の実測も加え,さらに検証を進めていきたい.

著者関連情報
© 2010 日本看護技術学会
前の記事 次の記事
feedback
Top