女性陸上短距離選手12名を対象に,自意識が食事調査の評価誤差に与える影響の有無について検討した。体重補正済みTEI(cTEI)は,二重標識水法で求めた総エネルギー消費量(TEE)と調査期間中の体重変動から算出し,同期間に実施した食事調査から求めたTEI(rTEI)と比較した。自意識の高低の評価には自意識尺度を用いた。cTEI(1,914±604 kcal/day)とrTEI(1,930±279 kcal/day)はTEE(2,392±376 kcal/day)よりも有意に低値であり,評価誤差のうち,記録誤差は+8.8±33.0%,食事量誤差は-20.4±19.1%であった。食事量誤差は12名全員が負の値であった。公的および私的自意識得点はそれぞれ58.3±7.8点,48.1±7.6点であった。自意識得点の高値群は低値群より,調査期間中の体重減少率が有意に大きく,cTEI,身体活動レベルが有意に低かった。記録誤差は2群間に有意差がみられ,高値群では6名全員が過大記録であり,低値群では6名中5名が過小記録であった。TEEやrTEI,食品群別摂取量,食事回数,PFCエネルギー比率に2群間で有意差はなかった。本研究により,女性陸上短距離選手において,自意識の高低が食事調査の評価誤差に影響している可能性が明らかとなった。