日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 熊澤 茂則, 津田 孝範
    2024 年 77 巻 3 号 p. 157-162
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/24
    ジャーナル フリー

    ミツバチの生産物の一つであるプロポリスは, ミツバチが植物の防御物質である樹脂を集めて, 自分の巣の補強や保持に用いているものである。プロポリスは古くからヨーロッパやアフリカなどの世界各地で民間伝承薬として使われてきた歴史があり, 日本では健康食品素材として普及している。プロポリスの原料となっている植物を「起源植物」と呼ぶが, プロポリスには異なる産地や起源植物に由来する様々なものが存在する。起源植物が違えば, プロポリスの成分組成は異なる。成分組成が異なれば, 当然生理機能も異なり, その活性には強弱がある。本稿では, プロポリスに関して, ポプラやバッカリスなどの代表的な起源植物, その含有成分, また主な生理機能に関して概説する。取り上げた生理機能は, 抗菌活性, 抗酸化活性, 抗腫瘍活性, ベージュ脂肪細胞化誘導作用である。

  • 山家 雅之, 谷 央子, 室田 佳恵子
    2024 年 77 巻 3 号 p. 163-170
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/24
    ジャーナル フリー

    プロポリスはミツバチが作り出す養蜂産品のひとつで, 高い抗菌, 抗酸化作用を有しており, 古くから民間療法として利用されてきた。ブラジル南東部で生産されるグリーンプロポリスはヒト試験において様々な有効性が報告されており, 特徴的に含まれるアルテピリンCやドルパニンなどの経皮酸誘導体がその活性成分であると考えられているが, 生体内への吸収や代謝に関する研究報告は多くない。私たちはこれまでに, ヒトおよびラットを用いてプロポリス成分の血中への吸収性や代謝物の解析を進め, プロポリス中でアルテピリンCよりも含有量の少ないドルパニンの方が高い血中濃度を示すことや, それらが抱合代謝を受けるだけでなく, 酸化反応により水酸基が導入されることを明らかにしてきた。本総説では私たちが行ってきた研究の結果を中心に, プロポリス成分として経皮酸誘導体に焦点を当ててその吸収性と代謝性について概説するとともに, 今後の展望について述べる。

  • 稲垣 良, 森口 茂樹
    2024 年 77 巻 3 号 p. 171-177
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/24
    ジャーナル フリー

    アルツハイマー病 (AD) は, 軽度から重度の認知機能障害を主症状とする神経変性疾患であり, 進行状況に応じて周辺症状であるうつ症状, 不安症状などの精神障害の出現が報告されている。現在臨床適応されているAD治療薬の治療満足度・貢献度は共に十分ではなく, 新しい作用機序を有する化合物開発は喫緊の課題である。プロポリスは自然界においてミツバチにより収集される天然物であり, 200種類以上の天然物 (桂皮酸誘導体, フラボノイド, ビタミン類など) により構成されている。これまでの報告では, プロポリスには神経保護効果・抗酸化作用があることが報告されており, プロポリスの活性成分として, artepillin C, caffeic acid, baccharin等が確認されている。本稿では, プロポリス摂取によるADの予防・治療への適応の可能性について紹介したい。

  • 安達 貴弘
    2024 年 77 巻 3 号 p. 179-186
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/24
    ジャーナル フリー

    プロポリスは古代より薬用にも利用され, 今日, 健康食品の一つとして注目されている。様々な効能が知られているが, 免疫系を制御する抗炎症作用や逆に免疫系を活性化させるアジュバント作用が知られている。我々は細胞系譜特異的なCa2+バイオセンサーマウスを樹立し, 生体イメージングによりリアルタイムで免疫細胞の動態のみならず, 活性化の可視化, さらに食シグナルの腸管センシングのリアルタイム可視化システムを確立し, 食品 (成分) の作用を高感度で評価できる系を構築した。プロポリスが樹状細胞やB細胞に直接刺激することや, アジュバント活性を示す様子が可視化により認められた。プロポリスをマウスに摂取させることにより, 小腸パイエル板の樹状細胞の活性化が亢進していた。また, プロポリスは食シグナルとして小腸上皮細胞にシグナルを惹起し, 迷走神経を介した脳腸軸により抗炎症に働いている可能性も示唆された。さらに, プロポリスの免疫機能について最近の知見を簡単にまとめた。

報文
  • 辻本 まどか, 林 泰資
    2024 年 77 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/24
    ジャーナル フリー

    L-オルニチンの抗不安作用や抗疲労作用が知られているが, これまでの報告は単回投与によるものである。食品であるアミノ酸に求められる機能性は, 長期投与を前提として考えられるべきである。本研究では, 心理社会的ストレスモデルとしてマウスの隔離飼育を行い, L-オルニチン長期投与の効果について, 行動薬理学的手法により検討した。隔離飼育マウスにおいて, L-オルニチン投与はオープンフィールド試験における運動活性を低下させ, 中心円内滞在時間を増加させた。またペントバルビタール睡眠試験では, 睡眠時間が延長した。高架式十字迷路試験とストレス性高体温試験では, L-オルニチン投与の効果はみられなかった。一方, 群飼育マウスに対して, L-オルニチンは全く効果を示さなかった。以上より, L-オルニチン長期投与はストレスレベルの高い隔離飼育マウスに対してのみ, ストレス緩和作用を発揮することが示された。

資料
  • 山口 範晃, 田丸 淳子
    2024 年 77 巻 3 号 p. 195-201
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/24
    ジャーナル フリー

    特別養護老人ホームで提供されている食事のエネルギーや各栄養素について, 日本食品標準成分表2015年版 (七訂) と2020年版 (八訂) により算出した値を比較し, 特別養護老人ホームの栄養管理における八訂の取り扱いについて検討することを目的とした。対象は特別養護老人ホーム1施設の96日分の1日当たりの献立3食および間食とし, エネルギーおよび各栄養素を七訂と八訂により算出した。1日の総エネルギーの平均値は七訂と比較して八訂では5.1%の減少となった。さらに, エネルギー産生栄養素の一つであるたんぱく質の平均値は, 窒素の量に基づいて算出される七訂のたんぱく質と比較して, アミノ酸組成に基づいて算出される八訂のたんぱく質では14.1%低く, 調査対象施設の給与栄養目標量に基づいて作成した献立では, たんぱく質は実際には目標量より低値で提供されている可能性が示唆された。本研究は1施設の限定的な調査であり, 更に対象を広げた詳細な検証を必要とする。

feedback
Top