日本栄養・食糧学会誌
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総説
食品中微量成分の生体内代謝調節に関する研究
(令和2年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
上原 万里子
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2021 年 74 巻 6 号 p. 281-289

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抄録

食品の成分には, ミネラル, ビタミンおよび植物性機能物質などが含まれている。これらは微量ではあるが, 糖・脂質・タンパク質代謝, 骨代謝, あるいは複数の代謝系を調節する重要な作用を有している。著者らは, 植物エストロゲンの臨床研究応用を目指した時間分解蛍光免疫測定法 (TR-FIA) を開発し, 自身の基礎研究にも応用した。フラボノイドの代謝には腸内環境が影響することから, プレバイオティクスとの併用摂取による代謝変動と骨粗鬆症モデルに対する効果を検討した。イソフラボン代謝産物のequolには鏡像異性体が存在し, (S) 体の方が (R) 体よりも生体利用率が高く, 骨量減少抑制作用も強いことが示唆された。柑橘系フラボノイドのhesperidinは, コレステロール合成経路を介して骨量減少抑制することが推察された。抗炎症作用を有する含硫化合物のsulforaphaneは, 従来の破骨細胞分化因子の抑制に加え, 破骨細胞融合分子の抑制を介し, 破骨細胞分化を制御することを明らかにした。鉄欠乏状態では脂質過酸化は起こりにくいとされて来たが, これまでの定説とは逆の鉄欠乏が惹起する生体内酸化メカニズムの一端を明らかにした。さらに, 鉄欠乏時のβ-カロテンおよびα-トコフェロールの代謝変動は, これらビタミン代謝に関与する鉄含有酵素により引き起こされる可能性を示唆した。

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