2026 年 79 巻 2 号 p. 137-142
宇宙環境は微小重力や放射線曝露など地上と大きく異なる特性を持ち, 宇宙飛行士の身体機能に多方面の影響を及ぼす。こうした環境において, 栄養管理は単なる栄養補給にとどまらず, ミッション全体に対するリスクマネジメントでもある。国際宇宙ステーション (ISS) における日本人宇宙飛行士の健康管理は, 従来米国航空宇宙局 (NASA) の体制に依存していたが, 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は2020年, 管理栄養士が分析・評価および助言を行う自立的な栄養管理体制を構築した。これにより食事を摂取してからフィードバックまでのタイムラグの縮小や食行動の可視化ができ, より個別の状況に即した支援が実現している。本総説では, 現状の栄養管理と日本人宇宙飛行士の嗜好性を考慮した宇宙日本食の役割を整理し, 2030年以降の月・火星探査を見据えた課題を共有する。栄養学を食卓に翻訳する専門職として, 宇宙と地上の知見を循環させる管理栄養士の存在が今後さらに重要性を増すと期待される。