栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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食蛋白レベルが尿クレアチニン排泄量におよぼす影響に関する研究
富田 義雄
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1961 年 14 巻 2 号 p. 105-117

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抄録

成人男子を被検者として長期間低あるいは高蛋白食投与試験を行ない, 食蛋白摂取量と尿中クレアチニン俳泄レベルの関係を検討し, その結果を成熟白鼠を用いてさらに確かめつぎの成績をえた。
1) 低蛋白食負荷の場台成人男子2名に熱量2400Cal/日, 蛋白質約80/9日の基準食投与後, 熱量はそのままとし蛋白約20g/日の低蛋白食を16日間, つづいて蛋白約409日を40日間以上与えると, 窒素出納は約10日間で零平衡に達するが, 一方尿中クレアチニン排泄量は徐々に階段的に減じ, 試験末期においては基準食時の値1.35~138g日にくらべ約13ないし17%低下した排泄レベルとなった。この場合クレアチニン係数としての低下は約11%ないし約14%であって, いずれも推計学的に有意であった。
つぎに成熟白鼠10匹に15%蛋白の基準食を2週間与え, ついで5%の低蛋白食を79日間, さらに無蛋白食を40日間投与すると, クレアチニン排泄量は5%低低蛋白食負荷で不安定に変動しながら減少し, 基準食時の平均値11.6mg/日に比べて40%あるいはそれ以上の低レベルとなリ, これは単位体重当り排泄量としてみても同様であった, しかし一方同時に測定した単位重量当り筋クレアチン含量には, その遊離クレアチン量, 燐クレアチン量分画をも含めて低蛋白食による影響がみられなかった。
2) 高蛋白負荷の場合, 人体試験で蛋白60g/日の基準食を48日間与え, クレアチニン排泄レベルが正常に維持されている際にさらに609の蛋白を追加して高蛋白食としても, その尿中排泄レベルには著変がなかった。しかし低蛋白食投与でクレアチニン排泄量が低下している場合には高蛋白負荷で, すみやかに正常レベルにまで回復するがそれ以上に引き上げることは困難であった。
同様の所見は成熟白鼠でもみられ, 15%蛋白の基準食2週間投与後25%高蛋白食を与えると, 若干クレアチニン排泄レベルは上昇したがその差は推計学的に無意であった。
3) 成人男子で食蛋白量の全量は60g/日で一定にし, その半量309だけを全卵, 大豆, 豚肉あるいはその混合物で置き換えて, 食蛋白の質の変化とクレアチニン排泄量の変動の関係を観察したが, 食質による影響は認められなかった。
4) 以上の成績から, 尿中クレアチニン排泄量はかならずしも恒定の排泄レベルを示すものではなく, きびしい食蛋白制限などのように生理機能の変化をひきおこす条件にともなって変化しうるものである。したがって体肉におけるクレアチニン生成にはなんらかのかたちで生体機能が密接に関連しており, これが単に筋クレアチンの量的パケーンを現わすものにすぎないとする従来の見解は不十分であると推論された。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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