抄録
(1) 大麦および小麦を種々のpH調整液で抽出し抽出液中の各態リンを定量した。その結果, かつて大麦小麦の水抽出液にはフィチン態リンが定量されないためこれら種実のフィチンは難溶性であると考えたが, これらではフィターゼの作用強くフィチンは著しく分解されるため抽出液はフィチン酸鉄の沈澱を与えぬに過ぎないことを知った。
(2) 白米, ライ麦, あわ, ひえ, そばの水抽出液について同様の定量を行なった。一般に穀類においては種実中のフィターゼの作用の強い時は, 大麦小麦と同様の現象を示し, そうでないときはフィチンはフィチン態リンの形態で多量に水に溶出されると考えられる。