抄録
食糧源, 蛋白源として, また光合成の媒体として研究されてきたクロレラには成長促進物質が含まれていることが解った。その物質は一般分析ではほとんどイーストエキスに類似しているが, その生物学的効果において非常に異なっていることが解った。
その有効物質は光合成を行なうことによって生産されるものであって, クロレラであっても暗培養したものでは非常に少ないことが解った。
成長促進効果も細胞分裂を促進させることに特徴がある。しかし培地が分裂速度に適していないことに原因があるようで, 培地組成さえ検討すれば全重量も細胞数の増大に比例して増加するものである。
クロレラエキスとイーストエキスは化学分析 (現状の) では区別できないが, 分子篩によって簡単に分別でき, しかも効果の差が明確にし得ることが解った。
あらゆる生物が生細胞の集団で, かつ細胞の分裂によって生命を維持していることから考えると, クロレラエキスはあらゆる生命の根源を与えてくれるものであるといえる。
人間を含めた高等動物に対して成長促進効果が認められているが, それは単にクロレラの蛋白質量でも必須アミノ酸のバランスだけでもなく, むしろ細胞分裂が促進されることにあるのではあるまいか。したがってクロレラだけで全栄養を吸収する必要はなく, むしろ栄養価 (カロリーではない) を高める効果を利用すべきである。最近のクロレラは, 単に蛋白源としてだけ注目されているのではなくなった。
クロレラの消化率が論議されていたが, むしろ変敗によることが多かったが, 現在では研究, 培養および処理技術が発達して来たので変敗などはほとんど考えられない。