抄録
シイタケの香気成分, レンチオニンの理化学的性質, とくに安定性を中心に研究した。
(1) レンチオニンは水, アルコールには難溶, 植物油または無極性溶媒には溶解する。
(2) レンチオニンは結晶の状態或いはアルコール, プロピレングリコール, 植物油などに溶した状態では安定である。水溶液ではその液性によって影響され, pH 2ないし4では安定であるが, pH 5以上になると不安定となる。
(3) 酸素, 有機酸・無機塩類, 界面活性剤などはレンチオニンの安定性に影響しないが, 光線, システインまたは亜硫酸塩のような還元剤はその分解を若干促進させる。
(4) 水溶液でのレンチオニンの分解形式はその液性によってことなる。すなわち, pH 4ないし6の溶液では1モルの硫化水素とチオカルボニル化合物が, またpH 10の溶液では, 最終的に約5モルの硫化水素が分解生成物として確認される。