栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
蛋白質分解酵素による脱脂ミルクの風味改善について
草野 愛子松井 道子野々村 善子
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1969 年 22 巻 4 号 p. 245-248

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抄録
以上脱脂粉乳から作られる脱脂ミルクに蛋白質分解酵素を作用させて, その風味改善に対する効果と, その際に起こる窒素区分の変動, 粘度変化等について実験を行なった。結果を要約すれば次のようである。
1. 酵素添加によって特有の脱脂ミルク臭は消失し, 甘味とコクを増した。しかし同時にFresh-milk臭をも消失し, 酵素濃度が高くなるにつれて渋味や苦味を生じ, 味はクドクなった。渋味, クドサは放線菌の酵素において, 特にStr. No. 1033 proteaseにおいて強く, 枯草菌の酵素ではむしろ苦味の発生が目立った。本実験における酵素作用条件, 失活条件での風味上適当な酵素濃度は, 放線菌の酵素では25~50units, 枯草菌の酵素では50unitsが適当であった。
2. 酵素添加によって生成するTCA可溶性N, アミノ態N, ペプチド態Nは微量であるがアミノ態N, ペプチド態Nの非蛋白態N中の割合はかなり大きく変動し, 放線菌の酵素ではペプチドの生成が多く, 枯草菌の酵素では反対にアミノ態Nの生成が多かった。これら少量のアミノ態N, ペプチド態Nは味に深く関連していると考えられ, 特にペプチドはコクを増し, むしろクドサを与え, また渋味や苦味の原因となると推察された。また以上の僅かのN変動が脱脂ミルク臭消失と関連あるものと推察された。
3. 比粘度は酵素添加によって減少した。しかしこの程度の粘度低下は薄い, 濃いという品質判定にほとんど影響しないと考えられた。
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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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