栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
アマニ油添加飼料で飼育した白ネズミ腎臓・ 丸の自己融解, 変性並びに代謝に及ぼすビタミンE欠乏と高食塩の影響
鈴木 秀雄
著者情報
ジャーナル フリー

1970 年 23 巻 2 号 p. 130-134

詳細
抄録

動物に高度不飽和脂肪酸を多量に与えた場合に過酸化によって生ずる遊離根のside effectとしての毒性が強くあらわれ, E欠乏症は促進される。この際Eを与えると欠乏徴候は回復する傾向が強いが油の毒性は完全に抑え難い。
著者が15%アマニ油を含むE欠乏飼料を10週間白ネズミに与え, E欠乏と同時に過剰NaClの影響をみたところ以下の結果を得た。
1) 各群とも腎糸球体の異常が認められ, また正常なネズミよりもクレアチン尿が増加した。
2) Eを与えない動物では腎糸球体, 尿細管の変化は一層著明であった。 腎臓の自己融解は早期に起こり, 同時にクレアチン尿は著しく増加した。 赤血球の溶血も対照群より高率であった。
3) 丸所見では異常が認められず, 退行性変化の出現にはいまだ時期を要すると思われるが肥大の徴があった。
4) E欠乏動物では発育が早くより緩慢となり, 水の摂取量も増え, 腎臓, 丸, 脾臓は肥大し, 油の毒性の影響として体脂肪の減少と黄褐色化, 性器周辺の外見異常, 血尿, ヘモグロビン尿, ウロビリン尿等の異常尿がみられた
5) Eは腎臓の自己融解, 赤血球溶血率血尿など比較的早期に現われる欠乏徴候に対し有効に作用したが腎糸球体所見異常, クレアチン尿の増加などの遊離根による強い影響を完全に抑えることができなかった。
6) NaClを添加したE欠乏動物は当初の発育状況, 水の摂取量, 赤血球溶血率およびクレアチン尿の成績はNaCl非添加群よりも良好であったが腎所見では一層著明な変化が認められた。
7) 腎臓と 丸の燐脂質パターンは腎臓においてEの欠乏した動物ではいずれの群もレシチンをはじめ, スフィンゴミエリンも著しく減少した。 NaCl添加群ではレシチンが-E群より増え, スフィンゴミエリンの値は対照に近づいた。 丸ではE欠乏群 (-E群) のスフィンゴミエリンは著しく増加した。
以上の臓器の燐脂質パターンからみてEは膜のレシチン代謝に必要で膜の安定化に役立っていることが注目される。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top