抄録
納豆製造過程における大豆蛋白質の変化を究明する目的をもって原料を等しくする蒸煮大豆, Bac. natto. No. 6による納豆, 市販菌による納豆および同一市販菌による市販納豆の5種の試料についてTCA可溶性区分の全アミノ酸と遊離アミノ酸組成をペーパークロマトグラフィーによって明らかにし, イオン交換カラムクロマトグラフィーおよび微生物定量法によってその定量を行なった。 結果を要約すると次のようである。
(1) 遊離アミノ酸としてβ-Alaを含む19種, 塩酸分解試料においてはTryを除く18種のアミノ酸および1個の不明スポットが認められた。
(2) TCA可溶性区分の全アミノ酸は蒸煮・醗酵過程で著しく増加し, 遊離アミノ酸よりペプチド態アミノ酸の増加率の方が高かった。 いずれにおいても含量の著しく高いものはAsp, Glu, Lys, 著しく低いものはCysであった。 各試料とも遊離度 (TCA可溶性全アミノ酸に対する遊離アミノ酸の割合) の高いアミノ酸はTyr, 著しく低いものはCysであった。
(3) 同一菌を用いた市販菌納豆, 市販納豆と Bac. natto No. 6 納豆についてペプチド態と遊離Asp, Gluの含量, 遊離度, 構成比の変動などを比較して, 両者にはAsp, Glu遊離能に差があり, 市販菌はGluよりAspの, No. 6納豆菌はAspよりGluの遊離能が強い特性を持つと考えられた。