栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
αs-, およびκ-カゼインに対するCaの吸着
牛乳のκ-カゼインに関する研究 (4)
金森 正雄三好 正満伊吹 文男牧 善輔
著者情報
ジャーナル フリー

1971 年 24 巻 4 号 p. 227-234

詳細
抄録

Caとカゼインとの反応をCa濃度0~10mMの範囲で調べた。 3mM濃度で沈殿し始めるαs-カゼインはκ-カゼインによって完全に安定化された。 κ-カゼイン自身もCaの存在で会合を起こし多分散状態を示した。 Caが存在しない場合, κ-カゼインとαs-カゼインのS20, wは各々14.4と1.8であったが, カゼインがCaの濃度の増加と共に会合していく様子が超遠心分析とゲルろ過によって確められた。 Caの存在下でαs-カゼインは時間と共に会合度を増し, ついには沈殿するがαs-κ-カゼイン複合体や炉カゼインでは時間変化が極めて緩慢であった。 pH7と8におけるカゼインによるCaの吸着量を透析平衡, ゲルろ過, 遠心分離の三方法を用いてCa濃度1~10mMの範囲で調べた。 αs-カゼインの沈殿に必要なCa量はpH7~8で, αs-カゼイン1M当り12Mであった。 遠心分離法によって得られた吸着Caの値が特に低いことから, カゼイン粒子の構造的要因によって吸着されるCaが, 静電気的吸着以外にあるのではないかと推定される。 Caを含有しないバッファーで45Ca-カゼインをゲルろ過することにより吸着されたCaの状態についての知見を得た。 一般的に言って, Caとの反応で, αs-κ-カゼイン複合体の吸着能はその構成カゼインであるαs-, κ-カゼイン単独の場合の吸着能から推定されるより強かったがκ-カゼインによるCa吸着強度は非常に弱かった。 なお, 吸着能の時間的変化についても検討した。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top