栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
κ-カゼインの化学修飾
牛乳のκ-カゼインに関する研究 (5)
三好 正満伊吹 文男牧 善輔金森 正雄
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1971 年 24 巻 4 号 p. 235-241

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抄録
この実験では, κ-カゼインのアミノ基, カルボキシル基, SH基, チロシン, トリプトファン, リジン, セリン, ヒスチジン, アルギニン, およびメチオニンを種々の方法で化学修飾し, それらがαs-カゼイン安定化作用に及ぼす影響について調べた。 κ-ヵゼインは分子間会合を通して複合体を形成しS20, wは14程度であり, アルカリとか尿素処理で始めてS20, w 2-3に分散する。 このため, 今回の修飾反応条件であるpH 7-9においてはκ-カゼイン分子はじゅうぶんに解離していないため, 反応基が複合体の表面に位置しているかどうかによって反応速度, ひいては修飾率が大きく左右されたと思われる。 アミノ基とカルボキシル基を修飾するとほぼ完全に安定化作用が消失し, ヒスチジンとチロシンの修飾も顕著な安定化力低下をもたらした。 κ-カゼインを還元してより低分子化すると未修飾κ-カゼインより安定化力が高まった。 またその他のアミノ酸残基の修飾は, αs-カゼインの安定化にほとんど関係がなかった。焦点電気泳動法による分析により, 6M尿素中においてκ-カゼインの等電点がpH 5より酸性側へ移ると急にαs-カゼインに対する安定化作用が失われることがわかった。 還元κ-カゼインの焦点電気泳動により6成分が分離され, そのうち等電点の中性側の成分が最も早く修飾を受けるので, これらの成分がκ-カゼイン複合体の表面に位置しているものと推定された。 デンプンゲル電気泳動により, κ-カゼインの化学修飾は分子電荷のみならず分子の大きさも変化させることが判明し, 特にセリン, ヒスチジン, それにチロシンを修飾したものは, 分子会合が進み, 他方TFA化したκ-カゼインとSH基を修飾したκ-カゼインはより小さい分子へ解離した。
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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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