栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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白ネズミの授乳時におけるカルシウム, リンおよびマグネシウム代謝
関 博麿
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1971 年 24 巻 5 号 p. 287-291

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抄録
出産, 授乳することによって親はCaおよびP不足になるといわれているので, 初産で授乳中の親にCa846mg%, P622mg%およびMg93mg%を含む飼料を投与して, 仔が開眼にいたるまで (16-18日間) のCa, PおよびMg出納と母乳から仔に移行するそれらの量を求め, 親の脱Caの様相を観察した。
(1) 仔は出生後16-18日間に体重26.4g, Ca量202.7mg, P量152.7mgおよびMg量6.8mgを母乳を通して親から得ている。 親の摂取量, 蓄積量また授乳仔数に関係なく仔の体重, Ca, PおよびMg量は大差なく発育する。
(2) 親のCaは正出納を示すが, 仔のCa要求量が親の蓄積量より多い時は, 親の体内Caが母乳中に溶離移行するようで仔数の多い親は脱Caを起こす。
(3) PもCaとおなじ傾向を示したが, 親の体内Pを母乳中に動員するほどのP不足にはならなかった。 仔の体内Ca/P比は新生仔とは逆に1より大となって, 体内CaがPより多く, 骨格の形成が一応整ったものと思われる。
(4) Mgの出納は負を示す親もあったが, 仔の要求量に比較して親の摂取量が多かったためか, 親は脱Mgにはならない。
(5) 親が飼料から摂取した無機質を乳汁中に分泌する量には限界があり, 仔の要求量がその限界量以上であれば, 親が体内に保留する無機質を動員して仔の要求量を満たすようである。
授乳によって親の体内無機質は失われるようであるから, 無機質の補給は授乳時にはもちろんであるが, 妊娠時から充分に補給して体内に保留させておく必要がある。
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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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